第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
上体を起こすと、隣のベッドにギフトが座っていた。


「ごめん...今どっちなんだい?」

「セルリアだが...。」

「セルリアか!ケビンは戻って来なかったか...。」

「気持ちよさそうに寝てたぜ。」

「其れは良かった。」


ギフトは笑顔でそう言った。
俺は少しボサついている髪を手で梳かしながら、欠伸を1つ吐いた。


「何でアヴァンが居るんだ?」

「さぁ?僕達と似たようなものでしょ。」

「俺、あいつ苦手なんだよ...。」

「君が僕達に紹介したんじゃないか。」

「成り行きだろーが、」


突然扉が勢い良く開かれ、誰かが俺に突進してきた。
反動で俺はまたベッドに戻された。
こんな事してくる奴は1人しかいない。


「ヤッホー!!ケビン!!!」

「退けッ!!この糞アマッ!!!」

「あれ?セルリア?」

「毎回合う度に突進しやがって!!」


俺が怒鳴るとアヴァンは渋々俺から降りた。
俺はベッドから起き上がると、少し揺れた頭を右手で抑えた。
ギフトは呆れ半分の笑みを俺に送ってきた。


「うわぁー、マジで何時ものセルリアだ。不思議だな。」

「何がだよ、つか何で此処に居るんだ?」

「んー、興味が湧いたからかな。それと...セルリアに会える気がしたか・ら♥」

「キメェ...。」

「酷いよぉ!!」


何が「会える気がした」だ、俺はアヴァンの事など微塵も好きではない。面倒臭い女だと心底思っている。嘘ではない、本当にだ。
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