第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
“えっ...つまりムッシュさんは僕なの?”

“んだ、ワタシはおめぇだ。セルリアが来てからずっと眠らされてたぁだよ。”


一人称ワタシなんだ...。
何だか違和感が凄いんだけど...。


“セルリアが迷惑掛けたね...。ごめん。”

“おめぇの謝ることだねぇよ。ワタシも悪かったしな。”

“何かしたんですか?”


ムッシュさんは自分の前髪をいじりながら、口を開いた。


“ギャンブルと博打で手持ちの金、全部使っちまっただよ。”

“え...。”

“んでも、其の5倍くれぇの金稼いだぁだよ!酷くねぇだか!?”

“勝手に使うのは流石に駄目ですよ。”

“5倍で返したぁのにか!?酷ぇだ!!”


流石のセルリアも怒るよ...。
生前が貧しかっただけあって、僕と会って暫くはお金に凄く五月蝿かったから...。

其の前に勝手にお金使うなんて、この人いくつなんだ。


“あの...歳は、いくつなんですか?僕は19歳です。”

“んぁ?...歳か、歳は...32だ。”


他人格は僕より年上でした。
しかも一回り上って、そしてギャンブラー...僕の本来の姿ってこんなにも荒んでいるのかな。

其の前に何でセルリアは、僕にムッシュさんの事を話してくれなかったのだろう。

セルリアに無駄に気遣われている様で、如何仕様も無い蟠り(わだかま り)が胸に広がった。
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