第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
“な、ケビン。”

“何ですか?ムッシュさん。”

“ギャンブルしてぇだ。”


如何やらムッシュさんの頭の中には、“ギャンブル”しか無いようだ。
元金の5倍で返した事は凄いと思うが、ギャンブルは頂けない。
下手したら全てが無くなってしまうからだ、僕はギャンブルが嫌いだ。

だけどムッシュさん...つまりはもう1人の僕はプロのギャンブラー。
ギャンブル特有の緊張感が好きなのだろうか。


“ギャンブルしぇてけどよぉ...今セルリアなんだろ。”

“はい、そうですよ。”

“セルリアはワタシがどう頑張っても、交代出来ねぇだよ。チキショー。”

“ち、チキショーって...。”


本当にギャンブルが好きなんだな。
同じ僕だと思うけど、飽きれてしまうのは仕方の無い事なのだろうか。


“にしても、おめぇ。綺麗な発音してんなぁ。”

“発音?ですか...。”

“ワタシ訛り強ぇけどよぉ。おめぇ綺麗な言葉だろ。”

“家柄の問題でしょうか...。”

“おめぇ貴族街だったぁな。”


堂々と言われると何だか嫌だな、貴族街に住んでいたと言うけれど、ほぼ軟禁状態だったし良い思い出は無い。

そんな生活から逃げ出したくて、ムッシュさんが出来たのかもしれない。



僕は自由になりたかったのかな...。
< 154 / 277 >

この作品をシェア

pagetop