第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
そんな事を考えていると、突然目の前にセルリアが現れた。
如何して此処に来たのか解らなかった。僕は目が点になっていたに違いない...。

僕が何時も見ているセルリアは、髪が短く目付きが悪い。だけど僕と同じ碧眼だ。

セルリアは僕とムッシュさんの姿を確認すると、ムッシュさんの胸倉に行き成り掴みかかった。


“手前ェ!!何でケビンと居やがるんだッ!?”

“セルリア!!待ってだ!怒んねぇでくれッ!!”

“戯言(ざれごと)はいいんだ!早く言いやがれ!!”

“あ、会って見だかっだぁだよ!!それだげだ!”


セルリアはムッシュさんの言葉を聞くと、乱雑に胸倉を離した。

セルリアは僕の方へ視線を移すと、ムッシュさんを踏み付けながら僕の元へ歩いて来た。
目の前に来ると、座っている僕と視線が合うようにセルリアはしゃがんだ。


“怪我ねぇーか?”

“うん、無いよ...。ムッシュさんは無事なの?”


セルリアは僕の質問に対して、眉間に皺を寄せ不機嫌そうに答えた。


“あいつは頑丈だから良いんだよ。”

“年上は敬うもんだ、青二才。”

“黙れおっさん”


上体だけ起こしたムッシュさんがセルリアに小言を言った。
セルリアはかなり威圧的にムッシュさんを支配していた様だ。
独裁政治が僕の中で行われていたのか...。


“ムッシュさん、良い人だよ。セルリア。”

“普通にしてりゃーな...。この生粋のギャンブラーにギャンブルや賭け事やらせてみろ...。化けるぞ、此奴は...。”

“ギャンブル好きって言ってたしね。”

“ワタシも会話に入れろや。外でおもれぇとあってんだろ?教えろや。”

“ムッシュさんも記憶の共有をしているんですか?”


ムッシュさんはまた前髪をいじり始め、セルリアの肩に強制的に乗り掛かった。
かなり嫌そうな顔をして、セルリアはムッシュさんを睨み付けた。


“んにゃ、勘だ。ワタシはおめぇ等の記憶ちっとも入ってこねぇよ...。ワタシ寂しい。”

“32のおっさんが寂しいとか言ってんじゃねぇーよ。キメェ...。”


セルリア、もっと仲良くしようよ...。

ムッシュさんは僕達(僕とセルリア)と違って、記憶の共有が無いのか。
僕が認識出来なかったのだ...不思議では無い事なのかもしれない。
よく解らないな...、僕達は。
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