第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
なんだかんだ言って、ディーブは歩いて行く事になった。
少し拗ねたものの、俺の手をしっかりと握っている。
何と言うか...気難しい性格だ、ディーブは。


「怒ってんのか?」

「...怒ってないよ。」


俺にそっぽを向いて答える。
絶対怒っているだろう、拗ねるなよ...たかが抱っこくらいで。


「怒ってんじゃねぇーか。あと拗ねてるし。」

「...怒ってないし、拗ねてないって言ってるだろう!」


顔を良く見れば薄く涙が瞳を覆っていた。
いや、泣く事ではないだろう...。

気まずい状況に陥った俺は、前を歩くギフトとドールに勘づかれない事を天に祈った。

心無しかディーブの握る手が強い。
だから泣かないでくれ...。


「ディーブ、おいディーブ。泣くなよ。
抱っこ断ったのは悪かったからさ。」

「...泣いてない。」


泣いてるだろう。

俺は溜息を吐くと、空いている手で頭を掻いた。
そして、涙が張り詰めているディーブを抱きかかえた。
驚いた様で体を震わせたが、すぐに俺の首へ腕を回すと顔を沈めた。

ほんの少しだけ肩が揺れている。
だからそれくらいで泣くなよ...。
年が年だから強くは言えないが、泣くのは良い事ではない。
それは俺が知っている。
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