第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
暫く歩いて俺達は、ケビンの記憶越しに見た小さな小屋に辿り着いた。
自然がとても豊かで、視界に入るものは鮮やかな緑ばかりだ。
ケビンにこんな綺麗なものを見せれた事が俺は嬉しかった。
何時も俺の後ろで眠っているだけだったからな...きっと良い思い出になったはずだ。
外にマーシャルの姿は見えず、ギフトは小さな小屋の襤褸(ぼろ)い扉をノックした。
木製の扉からは木特有の音と、朽ち果てた枯れた音が聞こえた。
今にも壊れそうな音と共に扉は開かれた。
中からは記憶越しで見た姿より、少し違う雰囲気を纏った少女が現れた。
この少女が本当にマーシャルなのか...。
記憶で見た少女は明るく無垢で、可愛らしい姿だった。
だが目の前にいる少女には其の全てが無かった。
あったのは絶望と何かの意思。
少女は俺達に怯えながらも、扉を開け中へ通してくれた。
小屋の中は気の軋む音が酷く、名も知らない蔓(つる)や蔦(つた)が壁を這っていた。
「これは、これは...酷い。」
ギフトは笑顔で言った。もっとオブラートに、包もうとは思わなかったのか。
ディーブも小さく「...酷いね。」と言っていた。
本人を目の前にして言うなよ、確かに酷いが...。
「今日はシヴァル君居ないんだね。」
マーシャルは1回だけ頷いた。
本当に喋れないんだな、ケビンの記憶越しで見た映像と、今俺自身が見ている現実を照らし合わせる。
ギフトは残念そうな顔をすると、出直そうと言った。
「シヴァル君が居ないならつまらない。じゃーねマーシャル、また来るよ。」
「マジで帰るのかよ。」
「マジだよ。彼女だけじゃつまらない。実につまらない。...そうだろう」
「...そうかよ。」
ギフトがマーシャルに背を向ける。
その時マーシャルが何処からか取り出した包丁を、ギフトの背中に突き刺した。
ギフトの服がじわじわと赤に染まる。
ドールはすぐさまマーシャルに握られた包丁を振り払った。
マーシャルの手はドールの人智を超えた怪力により、意図も簡単に解かれた。
急いでギフトに刺さった包丁を抜こうとするドールを、俺が抱きかかえているディーブが止める。
「今抜いたら駄目だ!無駄に血が流れる...!」
ドールの手が止まる。
ギフトはドールの頭を撫でると、マーシャルに視線を移した。
マーシャルは少女とは思えぬ形相で俺達を睨み付けてる。
「いや~僕も流石にビックリしたね。でも残念、相手が悪かったね。」
マーシャルは言葉を紡げない口で何かを言う。
何と言っているのか俺は解らなかったが、ギフトは理解したようで細く微笑んだ。
自然がとても豊かで、視界に入るものは鮮やかな緑ばかりだ。
ケビンにこんな綺麗なものを見せれた事が俺は嬉しかった。
何時も俺の後ろで眠っているだけだったからな...きっと良い思い出になったはずだ。
外にマーシャルの姿は見えず、ギフトは小さな小屋の襤褸(ぼろ)い扉をノックした。
木製の扉からは木特有の音と、朽ち果てた枯れた音が聞こえた。
今にも壊れそうな音と共に扉は開かれた。
中からは記憶越しで見た姿より、少し違う雰囲気を纏った少女が現れた。
この少女が本当にマーシャルなのか...。
記憶で見た少女は明るく無垢で、可愛らしい姿だった。
だが目の前にいる少女には其の全てが無かった。
あったのは絶望と何かの意思。
少女は俺達に怯えながらも、扉を開け中へ通してくれた。
小屋の中は気の軋む音が酷く、名も知らない蔓(つる)や蔦(つた)が壁を這っていた。
「これは、これは...酷い。」
ギフトは笑顔で言った。もっとオブラートに、包もうとは思わなかったのか。
ディーブも小さく「...酷いね。」と言っていた。
本人を目の前にして言うなよ、確かに酷いが...。
「今日はシヴァル君居ないんだね。」
マーシャルは1回だけ頷いた。
本当に喋れないんだな、ケビンの記憶越しで見た映像と、今俺自身が見ている現実を照らし合わせる。
ギフトは残念そうな顔をすると、出直そうと言った。
「シヴァル君が居ないならつまらない。じゃーねマーシャル、また来るよ。」
「マジで帰るのかよ。」
「マジだよ。彼女だけじゃつまらない。実につまらない。...そうだろう」
「...そうかよ。」
ギフトがマーシャルに背を向ける。
その時マーシャルが何処からか取り出した包丁を、ギフトの背中に突き刺した。
ギフトの服がじわじわと赤に染まる。
ドールはすぐさまマーシャルに握られた包丁を振り払った。
マーシャルの手はドールの人智を超えた怪力により、意図も簡単に解かれた。
急いでギフトに刺さった包丁を抜こうとするドールを、俺が抱きかかえているディーブが止める。
「今抜いたら駄目だ!無駄に血が流れる...!」
ドールの手が止まる。
ギフトはドールの頭を撫でると、マーシャルに視線を移した。
マーシャルは少女とは思えぬ形相で俺達を睨み付けてる。
「いや~僕も流石にビックリしたね。でも残念、相手が悪かったね。」
マーシャルは言葉を紡げない口で何かを言う。
何と言っているのか俺は解らなかったが、ギフトは理解したようで細く微笑んだ。