第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
俺はシヴァルの親指にナイフを当てがうと、ゆっくりナイフを引きながら切った。
シヴァルは身を切られる長い時間に叫び声を上げ、暴れるがドールの力の前では意味を持たない。

余り肉の無い指などは、すぐに骨に刃が到達する。
俺はナイフを止めるとナイフの峰(みね)に手を添え、一気に体重を掛けた。
鈍い音と共にシヴァルの親指が上を向いた。
皮一枚程度で繋がっている親指を切り離すと、マーシャルの前に置いた。


「良いね!良いね!!どんどん落としちゃってよ!
ねぇマーシャル!!今どんな気持ちなんだい!?
黙ってないで教えてくれよ!!」


マーシャルは現状への理解が追い付かないのか、唯呆然と目の前を見つめているだけだった。

そんな状態のマーシャルにギフトは、俺が切り落としたシヴァルの親指を手を伸ばして取ると、マーシャルの目の前に持って来た。


「ほら、見てよ!!シヴァル君の指だよ!ねぇ何とも思わないの?ねぇってば、」


マーシャルは震える唇を動かして、何かを言った。
俺には只の口パクにしか見えなかったが、ギフトは音の無い言葉を読み取ったようだ。


「ッ...アハハハ!!今更そんな事思ってたの!?面白い子だな!」

「おい、何て言ったんだよ?」

「“友達じゃ無いの?”だってさ。...ッ、あぁ駄目だ!ツボに入ったかも、」


ギフトは床を叩いて大声で笑った。
其の前に友達だったのか...。ケビンの記憶を辿ってみたが思い出せない。
ある程度笑いが収まったギフトは肩を揺らしながら、笑い泣きを起こしている瞳で俺を見る。


「続けてくれ、セルリア。」

「解ったよ。」


次に俺は人差し指にナイフを当てがった。
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