第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
side:ギフト
シヴァルの悲鳴を聞きながら、僕はマーシャルを抱きかかえていた。
マーシャルの足の出血はディーブが止血をしてくれた為、マーシャルの意識はまだはっきりとしていた。

指を切られるシヴァルから目を離さないように、僕はマーシャルの頭を両手で固定した。
僕って偉いよね、マーシャルをこんな姿にした人間に罰を与えているのだから。しかも本人の目の前で、嘘偽りなく罰を与えているんだ。
凄く偉いよね。

だけどマーシャルの反応がつまらない。体力が無いのが1番の原因だと思うけど、唯震えているだけではとてもつまらない。


「ねぇ、マーシャル。もっとさ、悲鳴とか上げてくれない?僕眠たくなるんだけど...。」

「...ギフト、マーシャルは悲鳴上げれないよ。」

「あぁ、そうだった。うっかり、うっかり。」


如何しよう...もっと遊びたいなぁ。
僕はマーシャルの胴体を足で固定し、耳元へ僕の口を近付ける。


「マーシャル。僕と話をしよう。君は聞いているだけでいいよ。
ねぇ、マーシャル。君は何故そんな姿になってまで、シヴァルをの為に動くんだい?僕には全く理解出来ない。
其処で僕は考えた。君はさ、自身を犠牲にしてまでシヴァルに尽くした。
シヴァルと君の関係は付き人であり幼馴染みだったね。君はシヴァルの事を思っていたんだね。大事だったんだ。其の狂気を知っていながらも、好いたんだ。
泣けるねー。でも僕には解らない、そもそも僕は“愛”そのものが解らない。愛ってなんだい?そんなもの唯の枷にしかならないだろう。
しかも自分を犠牲にするなんて...馬鹿馬鹿しい、笑えるね。大笑い出来るね。君が止めてと言っても、僕は笑いを止められない程にね。
長々と話してしまったけど、此れを最後に覚えておいてね。
...僕は、僕の邪魔になる人間は例え肉親、友人、恋人、仲間...どれでも殺す。」

「話は終わったのかよ。」


そう言うセルリアはシヴァルの全ての指を切断し終えていた。


「セルリア、ご苦労!!暇で仕方が無かったよ。」

「其の割には楽しそうに話してたじゃねーか。」

「こうも話してなきゃ寝ちゃうよ。」

「普通寝るか?...この状況で、」

「アハハ。あ、其れよりマーシャルの表情今どう?」

「俺に聞くなよ...。」
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