第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
セルリアに断られたので、仕方無く自分でマーシャルの顔を見た。何と言葉にしていいか解らなかったが、取り敢えず此れだけは言えた。
凄く良い表情をしている。

笑っているわけでは無い、良いあんばいに絶望しているのだ。
僕の声はちゃんと聞こえていただろうか。


「マーシャル!ねぇマーシャルってば!!
ほら、見てよ!シヴァルの指だ!!
ちゃんと10本あるでしょ!もっと間近で見ないと、解らないかな!?」


僕はマーシャルの頭を掴んだまま、床に並べてあるシヴァルの指に顔を近付けさせた。

マーシャルは僅かに残っている力で、其れに抗おうとしたが、結果は知れている。無意味且つ無駄な行為となった。


「そんなに嫌がるなよ。君の大好きなシヴァルの指だよ。」

「...悪趣味。」

「酷いな、ディーブ。あ、僕のコートからネイルハンマー出してくれない?」

「...良いよ。」


ディーブが僕のコートから、普通サイズのネイルハンマーを取り出してくれた。


「ありがとう!」


僕はディーブからネイルハンマーを受け取ると、マーシャルを抱えてシヴァルの目の前に移動した。
シヴァルは目を見開いて涙を流し、息を荒らげている。

セルリアは僕が何をするのか察したのか。少し引き気味で僕を見つめた。
そんな顔しないで欲しいな、とても楽しい事じゃないか。

セルリアにシヴァルの頭を、横にして押さえてもらった。
体重の軽いマーシャルの胴体を左腕で抱えながら、ディーブから受け取ったネイルハンマーをマーシャルの手に持たせる。
離さないようにマーシャルの手の上から、僕の手を重ねて一緒に掴んだ。

マーシャルの表情が酷く歪んだ。
流石に14歳には辛い事なのかな、だからと言って止めるつもりなんて、更々無いけどね。
マーシャルは小さく暴れた。学習能力が無いのか、無意味なんだよ。
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