第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
ドールがギフトの背中にに張り付いて、バーサルトに威嚇している。
話の内容からして威嚇する事ではないだろう。
だが、ガキ共と遊ぶと言うのは頂けない。俺達の仕事は人を殺す事だ、ガキなどと戯れている暇など無い。


「でも今、仕事は無いのでしょう。」


此方の意思を読み取ったかの様なバーサルトの台詞に、俺は勿論の事ギフトも驚いた様だった。

今まで黙っていたディーブがギフトの前に立つ。
バーサルトに向けられていた視線がディーブに集まる。
ディーブは視線など気になっていない様で、無表情のままギフトを見上げた。


「...遊ぶだけなら...良いと思う。」


そう言ってディーブはすぐに顔を下げた。
ギフトは参ったなといった顔をすると、米神を押さえていた手で自分の頭を掻いた。
バーサルトは嬉しそうにディーブを見つめる。


「ディーブがそっち側にいくと反論しずらいな...。」

「...我が儘言って...ごめん...。」

「責めてないよ。そんな顔しないで、」

「兄さんを困らせるな。」

「ドール、ディーブを責めるな。」

「でも...。」


ドールが捨てられた子犬のような目でギフトを見つめる。落ち込む事でも無いだろうに...。

ギフトは降参だと言った様に、腕を組むと面倒臭そうにバーサルトを見た。
バーサルトは爽やかな笑顔でギフトを見ていた。


「今日だけだからね...こういうのは。」

「流石ギフトさん。解っていますね。」

「この強制感は何だろ。」

「...マジかよ。」


国中から恐怖の目で見られている俺が、ガキの子守りなんかする事になるなんて誰が予想しただろうか。
仕事より疲れる事が合ってたまるかよ。

俺はこの上ない憂鬱感を溜息で少しだけ外に出した。
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