第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
バーサルトの教会へ行く事になった俺達は、今まさに其の教会の前に立っている。
襤褸くなくかと言って綺麗なわけではない、それなりの年季がある教会だ。

バーサルトは教会を前にして俺達へと顔を向けた。
其の顔は微笑んでいるのだが、何処か黒い何かを感じずにはいられなかった。


「もし、子供達を泣かせたら...。解ってますよね。」


俺達は必死に首を縦に振った。

教会の敷地内は割と綺麗で、仕入れの行き届いた芝生が陽の光を浴びて、青々しく輝いていた。
其処では何十人かのガキ共が楽しそうに駆け回っていた。

其の中に何処かで見た様な顔が2人見えた。どちらも何故かスーツを着ており、1人は髪を小さく結んでいる男、1人は金髪と言うには少し濃い色をした髪で右上に1つ結んでいる女だ。
女の方に見覚えは無いが男の方は、以前何処かで見かけた気がする。

何故かギフトが俺達4人を集めると、小さな声で尚且つ早口で話し始めた。


「今から僕の名前を言うなよ!絶対にだからな!僕の事は〝ジュラル〟と呼べ、解ったな!!」


ギフトが異様に焦っていたので、俺達は訳も解らず首を縦に動かした。
其れを確認したギフトは何時も前髪をとめていた白いピンを外すと、前髪の形を崩すように手で髪を崩した。
更に何故出て来たのか解らないが、コートのポケットから黒ぶちの眼鏡を取り出すとすぐさま掛けた。

簡単な変装を終えるとギフトは俺達を見回した。


「皆も早く!何か変装して!!髪型変えるだけでいいからさ!」

「そんな事言われても俺何にも出来ねぇーぞ。」

「ったく、君って奴は。」


ギフトは俺の長い右側の髪の毛を手慣れたように、手で纏めるとまたコートのポケットから何かを取り出した。
俺はされるがままギフトに髪をセットされた。

長い右側の髪は三つ編みにされて、後頭部を回って丁度左側に回ってきたところをギフトが付けていた白いピンでとめられた。
何でこんな女のような髪型をしなければならないのだ。

続いてギフトはディーブに手を移した。
ディーブは余り髪が長くないが、ギフトはそんな事気にもせず髪を結んでいった。
ディーブは確か、女達が言ってた...ハーフアップという髪型になった。

ドールに移ったギフトだが何時も上げている前髪を降ろして終わった。
だが、それだけでもかなりドールの印象が変わる。


「よし、此れで大丈夫。僕の事を名前で呼ぶなよ。〝ジュラル〟だからな。」


俺達は口々に解ったと言葉を紡いだ。
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