第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
ガキ共と今だに思い出せない2人の男女の輪の中に、あれ程慌ただしかったギフトが先頭を切って入って行った。
ガキ共は突然割り込んで来たギフトに対して少し驚いた様だったが、すぐにギフトを取り囲んだ。
身長が高いのもあるのか、ガキ共からは結構好評のようだ。


「バーサルト達もこっちへ来なよー!!」


ギフトの行動に追い付けていない俺はぎこちなく、何とも言えない表情のままギフトの元へ足を動かした。
他の皆も続いてガキ共の元へ向かう。

俺もすぐにガキ共に囲まれてしまい、身動きが出来なくなった。
ガキの対応なんか知らない俺は、如何すればいいのか解らずガキ共を見つめて困り果ててしまった。

すると、あの思い出せない男が手を差し伸べてくれた。俺が咄嗟に手を掴むと、男はガキ共の中から俺を引き出した。
男は何故か俺を自身の胸元に引き寄せると、ガキ共を見回した。


「お姉さんが困っているだろう。詰め寄るのは止めなさい。」


男はそう言って俺を離した。
其の前に少し待て、“お姉さん”って誰だ。かなり嫌な予感しかしないが...もしかして。


「失礼。大丈夫ですか。」

「あ、いや...ありがとう、ございます。」


呆気に取られて俺は柄にも無く敬語を使ってしまった。
男は優しそうに微笑んだ。


「まだ、名乗っていませんでしたね。俺は調整局刑事課所属、キース・ラドンです。」

「あ、え、...おr、いや私はセリィーと、言います...。」

「貴女に相応しいお名前ですね。セリィーさん。」

「アラ、私嬉シイデスワ...アハハ...。」


咄嗟に変な名前言ってしまった...。帰りたい、そして2週間は部屋から出たくない。
しかも此奴、このキースとか言う奴、調整局の奴じゃないか。
其れと思い出したぞ、此奴サラフィリアと出会った時にいた奴だ。
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