第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
「セリィーさんっ!一緒に遊ぼうっスよ!!あたし仕事に追われてるんで、中々遊べないっスから!」


いや、其れはお前の事情だろう。
マロンの視線がディーブを捉えたまま止まった。
一体如何したというのか、ディーブは逆に如何すればいいのか解らず、マロンを恐る恐る見つめながら様子を伺っている。

マロンは急に瞳を輝かせると、ディーブを持ち上げて更にディーブの顔を凝視した。


「なにこの子超絶可愛いんっスけど!!マジやば!激ヤバっすよ!!こんな可愛い生き物が存在して良いっスか!!?ちゃんと生きていけるっスか!?」

「...降ろして。」


頬を膨らませてディーブがマロンを睨む。随分と不服そうな顔だ。
ディーブも13だしな、流石に可愛いは言われたく無いのだろう。


「声も小さくてめっちゃ可愛いっス!!お名前なんて言うんっスか!?」


何を言っても駄目だと悟ったのか、ディーブはあっさり名前を名乗った。

ディーブの名前を聞くとマロンも自分の名前をディーブに告げた。

マロンはすっかりディーブをお気に入りにしたようで、ずっとディーブを抱きかかえている。


「ディーブ君ってセリィーさんの弟っスか!?」

「何と言うか...そんな感じ、です。」

「姉弟で美人と可愛いって最強セットじゃないっスか!!!超羨まっスよ!!」


羨ましがる前に俺への誤解を解いてくれ。
あのキースとか言う奴が俺の性別を間違えなければ、こんな屈辱を味わうことは無かったのに...。

ちょっと髪を結んだだけだろう。間違えるなよ。

俺は行き場の無い怒りと格闘している。
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