第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
大観衆から現れたギフトは、俺の元へ歩いて来た。
今まで何してやがったんだ。と言いたい事は山ほどあるが、ギフトが居れば俺の出番は終わりだ。
ギフトは俺を支えるように肩を貸してくれた。だが、ギフトは長身なので身長差が大きいく逆に辛い。
ギフトはドールの方を向くと、先程のように命令した。


「帰るぞ。これ以上目立つな。」

「解ったよ♥兄さん~♥」


無邪気な笑顔に戻ると、ドールはギフトの左腕に抱きついた。見るに堪えない左腕の事など、ドールは既に気にしていないようだ。普通なら激痛で身悶える筈なのだが、俺はまた溜息をついた。
女性が心配そうに俺を見ている。


「あっ、悪いあんた大丈夫か?」

「なんだい、君?知り合い??」

「ドールを止めている時に、巻き込んじまったんだよ。で、怪我ないかあんた?」


女性は大丈夫と答えた。怪我がないのなら、其れに越した事はない。
ギフトは女性を上から下までしっかり見ていた。
女性はギフトの視線に抵抗を感じている。
ギフトが 少し口角を上げた。


「家においでよ。足を捻っているね、右足を庇って立っているだろう。我慢は良くないよ。セルリア悪いけど1人で歩けるかい?」

「嗚呼、歩けるぜ。」


俺はギフトから離れると、痛む体でなんとか立った。
ギフトは女性に近づくと、女性の承知も聞かずにいきなり横抱きをした。
女性は少し悲鳴をあげた。いきなり横抱きされたら、悲鳴くらい上げる。ギフトはそんな事など無視して、家へ足を運んだ。

俺はドールに吹っ飛ばされたが、外傷が少なく体の損傷も少ない。
幸運と言えばいいのか解らないが、俺はギフトの後に続いた。

騒ぎが収まったからだろうか、大観衆の視線は何時の間にか無くなっていた。
相変わらず冷めた国民達だ、騒がれるよりましだがな。
気が付けばギフトがどんどん先に行ってしまっていたので、痛む体で走った。
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