第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
side:ギフト
ドールに自室まで運ばせ、僕は素直にベッドに横になった。
痛くも辛くも無いのに、ベッドで安静にする事は、僕にとって違和感を感じずには居られなかった。

普通は自分で体を休める為に、ベッドに入るものだろう。別の意味もある時はあると思うけど...。
だが、大抵は前者の筈だ。
けど僕には其れが無い。退屈だ。僕は暇というものが嫌いだ。
だって、何時も何かをしていたいじゃないか。休息は別として。

用を終えた筈なのに、ドールが僕の部屋から出て行かない。
何かを聞きたそうに、僕を見つめている。


「聞きたいなら、早く聞けばいいだろ。」

「...うん、」


僕と同じ金色の瞳を伏せながら、ドールは呟いた。
何故、躊躇うのだろう。口にするだけの事だろ。

ドールは決心がついたように、僕に視線を戻した。


「兄さんは...其の、怖くないの?」

「何が?」

「死んじゃうかもしれない事。」


何だ、そんな事か。
そんなくだらない事で、モジモジしていたのか。


「怖くないよ。」

「...何で、?」


今日はやけに、つかかってくるな。
面倒臭いな...。


「僕は生まれて此の方、恐怖や不安を抱いた事が無いからさ。
あの施設にいた時だって、僕は楽しんでいた。だって、人生楽しむものだろ。
施設では知識も取り入れやすかったし、何より簡単に人が殺せた。楽しいんだよ。
仮にもし死ぬ様な状況になっても、僕は恐怖を抱かない。
だって其れは唯、僕と言う存在が終わるだけの事じゃないか。
一体何処に恐怖を感じるんだい?」


僕の発言にドールはにっこりと笑った。
気持ち悪い奴だな。何で笑うんだよ。


「解った♥兄さんが怖くないなら、僕も怖くないよ♥」


そう言い残して、ドールは僕の部屋から出て行った。
結局あいつは何が知りたかったんだ。
実弟であるにも関わらず、ドールの思考回路は未だ謎のままだ。
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