第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
「そんな顔すんなよ。...安心しろ、俺は止めを刺さない。」

「どう言う事だ...。」


男は俺を睨んで聞いた。
俺は男を馬乗りしたまま、視線を男に落とす。
膝を立てると其処に、左肘を付いて頬をついた。右手でナイフを踊らせ続ける。


「まんまの意味だよ。簡単な事さ、四肢を切断する。唯其れだけの事だ。
嗚呼、倭王帝国では“だるま”って言うらしいな。
理解したか?...俺は止めを刺さない。」


男は自身が此れからどうなるのか見当がついたのか、更に顔を青くして首を横に振った。


「止めろ...そんなの、死ぬに決まってる。...まだ、死にたくない...。」

「ガキが産まれたばかりだもんな!!大切な者を残して逝っちまうもんな!!辛ぇよなッ!!知ってる、知ってるよ!!置いて逝かれた気持ちは特によく解る!!!アハハハッ!!!!アハハハハッ!!!」

「狂ってる...。此れが、『狂人』か...。」


男は冷静に俺を語った。


「何関心してんだよッ!!?」


感情に任せて俺は男を殴った。
俺は男の左腕を右足で踏み付けると、ナイフを肩に差し込んだ。
肉料理をする様に、ナイフを引く時に力を入れる。何度か其の作業を続けると、骨に刃が当たる。
先程から男の声が五月蝿い。

ナイフの柄を今一度強く握り締めると、力任せに骨を切り砕いた。鈍い音が暗闇に小さく鳴った。
男の声がより一層五月蝿くなった。
俺は気にせず、男の腕を切り落とした。

腕1本落とすだけでも、相当体力を使うものだな。
俺は汗を拭うと、嗚咽を垂れ流している男の右腕を、左足で押え付けた。
此処から先程と同じ作業を繰り返す。

右腕を落とす頃には、男は虫の息同然だった。
だが、断末魔だけは元気に叫んでいた。
次は両足を落とさなくてはならない。


「おっさん...、聞こえてるか?...まだ始まってもいねぇーんだ。勝手に死ぬなよ。」


男の頬を手で叩きながら、俺は男に声を掛ける。
微かだか男は頷いた。

俺は男の上から立ち上がると、右足の外側に移動した。
右太ももの関節...つまりは脚の付け根に狙いを定めると、ナイフを差し込んだ。
腕との時と同様に、引く時に力を入れる。
暫くして骨に到達する。足の骨は腕の骨より太いので、力技で如何にか出来るものではない。

俺は骨を残して、残りの肉を切った。今は骨だけが足を繋いでいる状態だ。
俺は脚を掴むと、関節を無理矢理外そうと引っ張った。
此れが中々上手くいかず、右へ引っ張ったり左へ引っ張ったりと、取り敢えず力尽で脚を落とそうとした。

其の際に男は腕の無い身を捩らせ、断末魔と嗚咽を繰り返していた。
俺は力の限り男の脚を引っ張っている。すると、何かから抜け落ちた様にスルッと脚が取れた。
余りに俺は力んでいたので、後ろへ倒れてしまった。ついでに後頭部を地面に打ち付けた。
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