第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
女性が帰ってからギフトが真剣な顔付きになった。


「今回は手強い...。何時もみたいに遊び半分じゃ、手に負えない。」


珍しく謙虚な発言に、俺達は驚かずにはいられなかった。
何時もなら自信満々の発言しかせず、高確率で他人を馬鹿にしたような、言い方しかしないギフトが、これ程真剣になるとは。
今回のターゲットはそこまでの奴という事を、思い知らされる。


「どんな奴なの?」


調査報告を聞いていないディーブは、ギフトに訪ねた。


「僕らと同じ、人体実験を行われた奴だ。」


ギフトはそう断言した。
俺は自身の記憶を振り返る。
確か顔を変えれるとかデイが言っていたが、それはフィネル・タラードでは無くフィーラ・タラガストではなかったか。


「おい、ギフト!それはターゲットとは別の人間だろ!」

「なんだいセルリア。気付いていないのかい?...大体、似たような名前なら疑わない方がおかしいだろ。それにあの実験施設にいたのなら、自分の名称なんかどうでもよくなるものだ。名前に関心のない者に、元の名前と全く違う名前が考えられると思う?少なくとも僕は思わない。そう考えるなら、元の名前と酷似した名前を使う可能性は限りなく高い。だから、今回のターゲットはフィーラ・タラガストだ。だが、問題なのは何故今頃、その施設の奴らが姿を現したのか...僕はこれが気になる。」


そこまで言い終えると、ギフトは両手を合わせて鼻を包むと、天井を見上げた。
俺は施設の事など解らないので、反論する事など出来なかった。
普通の口喧嘩でもギフトに勝てる自信は無い。
ギフトはああ見えて、天才だ。ムカつく程に...。
ディーブは何も言わずに、ギフトの意見を聞いていた。


「でも、そう考えるならターゲットの特定はどうするの?顔変えられたら、探そうにも探せないでしょ。」

「そうだよ!!それが問題なんだ!どうすれば、特定出来る...?何か共通点は...。」


ギフトとディーブは思考の波に沈んでいった。
俺は考えようにも、その考える頭が無い。自分で言うのもなんだが、俺は戦闘向きだ。こういった考えるのは他の奴らに任せるしかない。
俺はただここに座っているのも暇なので、暇潰しに外出する事にした。
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