第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
ハートの女王が扉を開く。
ゆっくりと慎重に、扉の金具の音が私の鼓動を早めた。
部屋の中が次第に明らかになっていく。
「やぁ、帰ってくると思っていたよ。
愛しい我が子達。」
あぁ、この声は...原作者だ。
「誰があんたの“子”だいッ!!巫山戯やがって!!」
ハートの女王が啖呵を切って、前方に飛び出た。
手負いのあの手では、自慢の鞭を振るう事は出来ない。
代わりにハンドガンを原作者に向けて構えた。
「イケナイ子だ。親にそんな物を向けるなんて...」
「あたし達はあんたから開放されるんだよ!!」
「まぁ、わたしは大人に興味は無いからね。
其の代わりに、“其の子”は置いて行ってもらうがね。」
「なんだと!?この外道がッ!!あたしの人生の次はこの子ってかい!?」
ハートの女王の目が血走っている。
構えているハンドガンも標準がぶれている。
「ハートの女王...私が引き受けましょう。」
「黙れ!!公爵夫人!こいつはあたしが殺らなきゃ気が済まないんだよ!!」
ハートの女王はハンドガンを両手で握り締めると、狙いを原作者に定めた。
こんな状況なのに、原作者は顔色1つ変えていない。
余裕そのものだ。
「君等にわたしが撃てるのかね?
“あれ”無しで生きていけるのか?」
「五月蝿いッ!!!」
「君等にとって、最高の代物だろう。」
「黙れ!!」
「“あれ”は依存性が高いからな。」
「止めろ!」
「入手ルートも知らないだろう。」
「喋るな...。」
ハートの女王は顔を伏せた。
公爵夫人とチェシャ猫も、悲痛の表情を浮かべ顔を伏せた。
原作者の言う“あれ”は、恐らく...
“Porta del Paradiso(楽園の扉)”の事だろう。
原作者が私達に“お菓子”と称して食べさせていた物だ。
其れを食べると、とても幸せな気持になるの。
けど、其れは...原作者の思惑通りだったわ。
嗚呼なんて恐ろしい事なのだろう。
「其の引き金を引けるのかな?」
「くっ...」
チェシャ猫が、ハートの女王を押し退けて前へ出た。
其の手にもハンドガンが握られていた。
2~3弾威嚇で放つと、ハートの女王の手を引いて扉から飛び出した。
公爵夫人と私に目で合図すると、長い廊下を走り抜けた。
原作者の部屋から遠のき、人気の無い踊り場で私達は止まった。
チェシャ猫がハートの女王の手を離す。
「何で...何で、逃げたんだいッ!?」
チェシャ猫がハートの女王の頬を叩いた。
張りのある音が周囲に響いた。
「そっちこそ何考えているんだよ!!
激上に任せてあいつを殺しても、如何しようも無いでしょ!!」
「...ハートの女王、少し冷静になりましょう。私達の目的は白ウサギを取り戻し、薬の手の届かない場所へ逃げる資金を手に入れる事...そうでしょう。」
「...解ってる。」
ハートの女王は先程より、冷静さを取り戻した様だ。
私の元に近付いて、頭を撫でてくれた。
「みっともない姿見しちまったね。」
「ううん。大好きだよ、“お母さん”」
ハートの女王は私を1度だけ抱き締めると、意を決した表情になった。
ゆっくりと慎重に、扉の金具の音が私の鼓動を早めた。
部屋の中が次第に明らかになっていく。
「やぁ、帰ってくると思っていたよ。
愛しい我が子達。」
あぁ、この声は...原作者だ。
「誰があんたの“子”だいッ!!巫山戯やがって!!」
ハートの女王が啖呵を切って、前方に飛び出た。
手負いのあの手では、自慢の鞭を振るう事は出来ない。
代わりにハンドガンを原作者に向けて構えた。
「イケナイ子だ。親にそんな物を向けるなんて...」
「あたし達はあんたから開放されるんだよ!!」
「まぁ、わたしは大人に興味は無いからね。
其の代わりに、“其の子”は置いて行ってもらうがね。」
「なんだと!?この外道がッ!!あたしの人生の次はこの子ってかい!?」
ハートの女王の目が血走っている。
構えているハンドガンも標準がぶれている。
「ハートの女王...私が引き受けましょう。」
「黙れ!!公爵夫人!こいつはあたしが殺らなきゃ気が済まないんだよ!!」
ハートの女王はハンドガンを両手で握り締めると、狙いを原作者に定めた。
こんな状況なのに、原作者は顔色1つ変えていない。
余裕そのものだ。
「君等にわたしが撃てるのかね?
“あれ”無しで生きていけるのか?」
「五月蝿いッ!!!」
「君等にとって、最高の代物だろう。」
「黙れ!!」
「“あれ”は依存性が高いからな。」
「止めろ!」
「入手ルートも知らないだろう。」
「喋るな...。」
ハートの女王は顔を伏せた。
公爵夫人とチェシャ猫も、悲痛の表情を浮かべ顔を伏せた。
原作者の言う“あれ”は、恐らく...
“Porta del Paradiso(楽園の扉)”の事だろう。
原作者が私達に“お菓子”と称して食べさせていた物だ。
其れを食べると、とても幸せな気持になるの。
けど、其れは...原作者の思惑通りだったわ。
嗚呼なんて恐ろしい事なのだろう。
「其の引き金を引けるのかな?」
「くっ...」
チェシャ猫が、ハートの女王を押し退けて前へ出た。
其の手にもハンドガンが握られていた。
2~3弾威嚇で放つと、ハートの女王の手を引いて扉から飛び出した。
公爵夫人と私に目で合図すると、長い廊下を走り抜けた。
原作者の部屋から遠のき、人気の無い踊り場で私達は止まった。
チェシャ猫がハートの女王の手を離す。
「何で...何で、逃げたんだいッ!?」
チェシャ猫がハートの女王の頬を叩いた。
張りのある音が周囲に響いた。
「そっちこそ何考えているんだよ!!
激上に任せてあいつを殺しても、如何しようも無いでしょ!!」
「...ハートの女王、少し冷静になりましょう。私達の目的は白ウサギを取り戻し、薬の手の届かない場所へ逃げる資金を手に入れる事...そうでしょう。」
「...解ってる。」
ハートの女王は先程より、冷静さを取り戻した様だ。
私の元に近付いて、頭を撫でてくれた。
「みっともない姿見しちまったね。」
「ううん。大好きだよ、“お母さん”」
ハートの女王は私を1度だけ抱き締めると、意を決した表情になった。