第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
side:セルリア
俺の居たあの廃墟はイルバー通りのものだった。キハウズ通りから少々離れているが、特別遠いわけでもないので、俺はすぐに『Sicario』に辿り着く事が出来た。
何だか久しぶりに、目にする見慣れたドアのドアノブに手を掛けた。
ドアを開こうとした時、内側から突然開けられ、ドアの角が俺の額にぶつかった。
額を押さえ、悲痛の声を殺しながら、俺は其の場にうずくまった。
「おっ!セルリア~!!帰ってたんだね!!」
このムカつく明るい声はあいつだ。ギフトだ。
「何うずくまってんの?早く中に入りなよ。」
「手前ェがいきなりドア開けたからぶつかったんだろうがよ!!!」
「解った、解った。一々そんな事でキレてないで、報告をくれないかな。」
言い返したい衝動に駆られたが、ギフトに言い返した所ではたかが知れている。
俺は言葉の代わりに溜息をつくと、家の中へ入って行った。
「よく生きてたな。」
ナタリアが疲れ切った顔で言ってきた。
「殺人鬼なめんなよ。」
「久しぶりですね。」
懐かしい声と思ったら、ファクトじゃないか。
恐らくギフトが呼んだんだろうな。
「そうだな。」
「マスターに迷惑、心配、其の他諸々、掛けていませんよね。」
「一々うるせぇーな。“ファック”」
俺はファクトに嫌味を垂らして言った。
「私の名前を文字って、“死ね”と言わないで欲しいですね。教養も無い癖に。」
「“ファック”は確かブルタル語だったけか?良い言葉じゃねぇーか。ファクトにそっくりで」
「表へ出ますか?」
ファクトが額に血管を浮かべて、親指で玄関のドアを指した。
「別に良いけどよ...。後で泣いても知らねぇーぞ。」
「其の言葉、そのまま返します。」
「2人共、喧嘩しないで。」
ギフトが俺とファクトの間に入って、距離を開いた。
ちょっと茶化しただけじゃねぇーか。
乗ってくるあっちが悪いんだよ。
「セルリア。『不思議の国』と接触して、何か解った事あるかい?」
「解った事っつたって...俺記憶がねぇーんだよ。多分実際会ってんのはケビンだと思うぜ。」
「...そうか。」
「ふんっ...役たたず。」
「あ゙ぁ゙?」
ファクトの額に俺の額をぶつけて、ガンを飛ばす。
「だから、止めてって...。」
「...兄さんの言う事が聞けないの?」
ドールが俺とファクトの頭を掴んで、ドールの方向に無理矢理向かせた。
完全にスイッチが入った目をしていた。
「ドールも止めろって...。まぁ、セルリア。記憶が無いのは仕方が無いとして、他に何か無いかい?」
「他か...此れくらいしかねぇーな。」
俺はコートのポケットから、あの手紙を取り出して、ギフトに渡した。
ギフトは其の手紙に目を通すと、瞳を細めて口角を上げた。
大方、予想通りと言ったところだろうな。
俺の居たあの廃墟はイルバー通りのものだった。キハウズ通りから少々離れているが、特別遠いわけでもないので、俺はすぐに『Sicario』に辿り着く事が出来た。
何だか久しぶりに、目にする見慣れたドアのドアノブに手を掛けた。
ドアを開こうとした時、内側から突然開けられ、ドアの角が俺の額にぶつかった。
額を押さえ、悲痛の声を殺しながら、俺は其の場にうずくまった。
「おっ!セルリア~!!帰ってたんだね!!」
このムカつく明るい声はあいつだ。ギフトだ。
「何うずくまってんの?早く中に入りなよ。」
「手前ェがいきなりドア開けたからぶつかったんだろうがよ!!!」
「解った、解った。一々そんな事でキレてないで、報告をくれないかな。」
言い返したい衝動に駆られたが、ギフトに言い返した所ではたかが知れている。
俺は言葉の代わりに溜息をつくと、家の中へ入って行った。
「よく生きてたな。」
ナタリアが疲れ切った顔で言ってきた。
「殺人鬼なめんなよ。」
「久しぶりですね。」
懐かしい声と思ったら、ファクトじゃないか。
恐らくギフトが呼んだんだろうな。
「そうだな。」
「マスターに迷惑、心配、其の他諸々、掛けていませんよね。」
「一々うるせぇーな。“ファック”」
俺はファクトに嫌味を垂らして言った。
「私の名前を文字って、“死ね”と言わないで欲しいですね。教養も無い癖に。」
「“ファック”は確かブルタル語だったけか?良い言葉じゃねぇーか。ファクトにそっくりで」
「表へ出ますか?」
ファクトが額に血管を浮かべて、親指で玄関のドアを指した。
「別に良いけどよ...。後で泣いても知らねぇーぞ。」
「其の言葉、そのまま返します。」
「2人共、喧嘩しないで。」
ギフトが俺とファクトの間に入って、距離を開いた。
ちょっと茶化しただけじゃねぇーか。
乗ってくるあっちが悪いんだよ。
「セルリア。『不思議の国』と接触して、何か解った事あるかい?」
「解った事っつたって...俺記憶がねぇーんだよ。多分実際会ってんのはケビンだと思うぜ。」
「...そうか。」
「ふんっ...役たたず。」
「あ゙ぁ゙?」
ファクトの額に俺の額をぶつけて、ガンを飛ばす。
「だから、止めてって...。」
「...兄さんの言う事が聞けないの?」
ドールが俺とファクトの頭を掴んで、ドールの方向に無理矢理向かせた。
完全にスイッチが入った目をしていた。
「ドールも止めろって...。まぁ、セルリア。記憶が無いのは仕方が無いとして、他に何か無いかい?」
「他か...此れくらいしかねぇーな。」
俺はコートのポケットから、あの手紙を取り出して、ギフトに渡した。
ギフトは其の手紙に目を通すと、瞳を細めて口角を上げた。
大方、予想通りと言ったところだろうな。