第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
残り数歩と言ったところだ。
「待ち伏せとは...これはまた酔狂ですね。」
男の囁きがシルクのような滑らかさで耳に入り込んできた。
瞬間目の前で何か糸のようなものが光って見えた。
ほぼ反射的に身を屈めた。ドールも俺の咄嗟の行動に反応して、共に身を低くした。
俺の頭があった壁の位置に、細い亀裂が走る。
間違いない...殺りにきやがった。
「おや、避けましたか。」
「黒ウサギ!」
俺に気付いてガキが男の手を離して傍に寄って来る。
其の後ろで男の持っていた白い棒から、アイスピックに似た形状の針が抜き出された。
ガキの背後...正確には後頭部から俺を狙っている。
男の後ろに居る女が其れを止めようと男を制止しようとしている。
だが間に合いそうにない。
「危ねぇだろうが!」
ガキを抱き寄せ右手でアイスピックを掴んだ。
流れでガキを俺の背後へ移すと、左手に握られているナイフで男の手首を狙う。
「ッ...!?」
切り落とす気でいたが、直前でまたあの糸のようなもので邪魔されてしまった。
傷は付けれたもののさして深くない。其れにあの糸の所為で、浅いが俺も傷を負ってしまった。
「ドールッ!!」
「解ってるよ。五月蝿いな。」
俺を飛び越えてドールが男の前に立ちはだかった。
俺一応170後半はあるんだけどな、身長...。
どんな脚力してんだ。まさに化け物だな。
「お前は殺していいよね?『不思議の国』じゃないなら殺していいよね!?そしたら兄さんはボクを褒めてくれるよねッ!!?」
意味の解らない事を言いながら、ドールは男に殴りかかる。
しかし拳は男に届かず残り僅か数cmで止まった。
「無理に動かせば腕を無くしますよ。」
男は声色を低くして言った。脅しを掛けているのだろう。
「...腕を無くすからなんなの?」
「なッ!?」
ドールはそんな事気にも止めない。
彼奴の世界はギフトを中心に廻っているのだ。
自分の事など端から考えてなどいない。
赤い線が腕に浮かび上がり、つうっと滴れて床に落ちる。
どんどん赤は濃くなっていき、流れ出る血は止めどなく溢れ出す。
「ここまでトんでる人は初めてですよ。」
「何言ってんの?...ボクが1番正常に決まってるでしょ。」
ドールの右脚が男の左肋(あばら)に入った。
鈍い音と共に男は4~5m先まで吹き飛ばされて行った。
普通、蹴りで人があんなに飛ぶかよ...。
糸が緩んだのかドールの腕は自由を取り戻したようだ。
続いてドールは女を見据えた。
「お前は何だ?」
「『不思議の国』の1人。公爵夫人です。」
怖気ずくことなく公爵夫人はそう答えた。
ドールが俺を振り向いて、笑顔で送る。
「此奴等連れて行けば、兄さんに褒めてもらえるね。」
「そーかもな。」
俺に聞くなよ。
褒めるも褒めないもギフトなのだから。
「白ウサギ、何故此処に?」
「俺は白ウサギじゃねぇーって。つか、俺もよく解ってねぇーよ。」
「...?貴方本当に白ウサギのケビン?」
「俺はセルリアだ。ケビンは今眠ってる。其れが如何かしたのか?」
苛立ちつつ俺はそう言った。
「待ち伏せとは...これはまた酔狂ですね。」
男の囁きがシルクのような滑らかさで耳に入り込んできた。
瞬間目の前で何か糸のようなものが光って見えた。
ほぼ反射的に身を屈めた。ドールも俺の咄嗟の行動に反応して、共に身を低くした。
俺の頭があった壁の位置に、細い亀裂が走る。
間違いない...殺りにきやがった。
「おや、避けましたか。」
「黒ウサギ!」
俺に気付いてガキが男の手を離して傍に寄って来る。
其の後ろで男の持っていた白い棒から、アイスピックに似た形状の針が抜き出された。
ガキの背後...正確には後頭部から俺を狙っている。
男の後ろに居る女が其れを止めようと男を制止しようとしている。
だが間に合いそうにない。
「危ねぇだろうが!」
ガキを抱き寄せ右手でアイスピックを掴んだ。
流れでガキを俺の背後へ移すと、左手に握られているナイフで男の手首を狙う。
「ッ...!?」
切り落とす気でいたが、直前でまたあの糸のようなもので邪魔されてしまった。
傷は付けれたもののさして深くない。其れにあの糸の所為で、浅いが俺も傷を負ってしまった。
「ドールッ!!」
「解ってるよ。五月蝿いな。」
俺を飛び越えてドールが男の前に立ちはだかった。
俺一応170後半はあるんだけどな、身長...。
どんな脚力してんだ。まさに化け物だな。
「お前は殺していいよね?『不思議の国』じゃないなら殺していいよね!?そしたら兄さんはボクを褒めてくれるよねッ!!?」
意味の解らない事を言いながら、ドールは男に殴りかかる。
しかし拳は男に届かず残り僅か数cmで止まった。
「無理に動かせば腕を無くしますよ。」
男は声色を低くして言った。脅しを掛けているのだろう。
「...腕を無くすからなんなの?」
「なッ!?」
ドールはそんな事気にも止めない。
彼奴の世界はギフトを中心に廻っているのだ。
自分の事など端から考えてなどいない。
赤い線が腕に浮かび上がり、つうっと滴れて床に落ちる。
どんどん赤は濃くなっていき、流れ出る血は止めどなく溢れ出す。
「ここまでトんでる人は初めてですよ。」
「何言ってんの?...ボクが1番正常に決まってるでしょ。」
ドールの右脚が男の左肋(あばら)に入った。
鈍い音と共に男は4~5m先まで吹き飛ばされて行った。
普通、蹴りで人があんなに飛ぶかよ...。
糸が緩んだのかドールの腕は自由を取り戻したようだ。
続いてドールは女を見据えた。
「お前は何だ?」
「『不思議の国』の1人。公爵夫人です。」
怖気ずくことなく公爵夫人はそう答えた。
ドールが俺を振り向いて、笑顔で送る。
「此奴等連れて行けば、兄さんに褒めてもらえるね。」
「そーかもな。」
俺に聞くなよ。
褒めるも褒めないもギフトなのだから。
「白ウサギ、何故此処に?」
「俺は白ウサギじゃねぇーって。つか、俺もよく解ってねぇーよ。」
「...?貴方本当に白ウサギのケビン?」
「俺はセルリアだ。ケビンは今眠ってる。其れが如何かしたのか?」
苛立ちつつ俺はそう言った。