第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
話を戻し、俺達はガキの案内の元其の地下室へ向かう事になった。
『不思議の国』のメンバーは確保ってギフトが言ってたからな。白ウサギってのも連れて行かなくてはいけないのだろう。
暫く歩いてガキが壁の突き当たりで足を止めた。
映画や漫画じゃあるまいし、まさか仕掛けとか言うんじゃないだろうな。
「行きどまりじゃねぇーか。」
「確か、この壁の...」
ガキは壁を手でなぞり始めた。
壁の何処かにそう言うものがあるって事か。この様子では完璧に思い出しているわけではなさそうだ。
記憶に残っている物を手辺り次第に試していると言った感じだ。
ガキがまだ壁に何かを探している中。
後方で足音が聞こえた。ドールも聞こえたらしく何時もとは違い表情が厳しい。
公爵夫人は気付いていない。ガキも同様だ。
ゆっくり視線を後ろへと向ける。
姿の見えない足音が徐々に形を表し始めた。
「犯罪者共...仲が良い事だな。」
スーツ姿の男が其処に立っていた。
彼奴は...バーサルトの教会にいた調整局員じゃないか。名前は確か...キース、だったかな。
其れにしても、嗚呼最悪だ。
ガキと公爵夫人が其の声に一際怯えたような声が聞こえた。
面識ありって事か。
「お前は...爆弾魔の時見た顔だ。成程(なるほど)、犯罪者だったのか。」
「犯罪者、犯罪者、うっせぇーな。何の御用だ、調整局員様よぉ。」
俺とキースの会話を固まって見ているガキに小声で言った。
「早くしろ。時間稼ぎくらいはしてやる。」
「セルリア...。」
名前を呼ばれたが俺は返事をする事はなかった。
ポケットからナイフを取り出すと、挑発がてらキースに突き付けた。
案の定其れに乗ったキースは懐から拳銃を取り出した。
見た事ある銃だ。自動拳銃のグロッグ17じゃねぇーか。
確か口径9mmだったっけか。装弾数は17発だった気がする。
こっちは飛び道具持ってねぇーぞ。
最悪にも程あるってもんだろ。
「セルリア。あれ知ってる?」
「知ってるけど。如何したのかよ。」
「装弾数は?」
「17発だと思うぜ。」
「17発か...。沢山だね~。」
17発と数えられる弾数だから沢山とは言い難いがな。
とは悠長に言ってられない。キースは早速撃ち始めた。容赦の無い事だ。
俺は前方へ前進しキースの意識を俺に集中させる。
あの2人に死なれては仕事にならないからな。
「掛かったな。」
キースはそう呟いて微笑んだ。
まさか...。
角の向こう側から女が現れた。
此奴もバーサルトの教会にいた調整局員だ。そう言えば一緒に居たな。マロンだったか。
「あたし銃とか初めてなんっスよッ!!!」
マロンは目を瞑り叫びながら引き金を引いた。
目瞑って引き金引く阿呆がいるか。
だが其のおかげで弾道が大幅にズレている。銃弾は俺に当たる事なく過ぎ去って行った。
「武器をまともに使った事無い人間には荷が重かったようだな!!調整局員ッ!!」
ナイフを握り締めキースの胸元に突き立てた。
硬い...防弾チョッキか。用意周到だな。
ナイフを引き銃を持っている腕を狙う。逆手に握り直し切りつける。
簡単にいく筈もなく器用に銃で受け流された。
ナイフを押し進めるのは得策ではないな。完全にナイフを意識しているから、反応速度が速い。とてもじゃないがナイフの攻撃は厳しい。
フェイクでも掛けてみるか...。
逆手のまま首元を狙う。案の定、銃でカバーしようと銃を首元へ持って来た。
其の隙を狙ってナイフとは反対側から蹴りを入れる。
油断していたのか蹴りは素直に入った。
キースが揺らめく。
だがこの程度でダウンしてくれる筈もなく、キースは此方を睨み付けている。
俺は再びキースの懐に入り込みナイフで応戦した。
やはり警戒が強い所為か、刃は一向に届かない。俺も銃を持ってくるべきだったな。今更ながら後悔した。
銃声が鳴り響く銃弾が俺の腕を貫いた。嗚呼最悪だ。
しかし利き腕ではなかった事が幸いだ。
「チッ...。」
「舌打ちとは、余裕だな。」
キースが俺の両肩を握りしめ、腹部に膝で蹴りを入れた。
胃酸が口内に染み渡る。実に不快だ。
キースは両肩を離すとマロンの方に俺を蹴り飛ばした。
マジで容赦ねぇー。
「マロン、撃て。」
「むむむ、無理っスよッ!!あたし殺しとか嫌ッスよ!!そもそもこれバレたらヤバイっスよ!!」
「良いから撃て。」
「キース先パイ!!!」
「撃て。」
「先パイらしくないっスよ...。」
何だ、私情で来たのか。
俺は素早く起き上がりマロンの背後を取った。ついでに銃も。
首を腕で締めあげる。勿論本気ではない脅しでだ。
「調整局員。手前ェ私情で此処に来ただろ。まるで殺人鬼だな。」
「違う。俺は正当な事をしている。」
「正当?...だったら自分の面(つら)鏡で見てみろよ!!俺等と同じ目だぞ、そりゃ!!」
「貴様の戯れ言など聞いている暇などない!!」
仲間を盾にしているというのに、銃口が一切ブレていない。
何て野郎だ...。
「ドールッ!!!来い!!」
キースが引き金を引き切る直前。
背後にドールが見えた。
「命令するなよ。兄さんでも無い癖に。」
悪態を付きながら...。
『不思議の国』のメンバーは確保ってギフトが言ってたからな。白ウサギってのも連れて行かなくてはいけないのだろう。
暫く歩いてガキが壁の突き当たりで足を止めた。
映画や漫画じゃあるまいし、まさか仕掛けとか言うんじゃないだろうな。
「行きどまりじゃねぇーか。」
「確か、この壁の...」
ガキは壁を手でなぞり始めた。
壁の何処かにそう言うものがあるって事か。この様子では完璧に思い出しているわけではなさそうだ。
記憶に残っている物を手辺り次第に試していると言った感じだ。
ガキがまだ壁に何かを探している中。
後方で足音が聞こえた。ドールも聞こえたらしく何時もとは違い表情が厳しい。
公爵夫人は気付いていない。ガキも同様だ。
ゆっくり視線を後ろへと向ける。
姿の見えない足音が徐々に形を表し始めた。
「犯罪者共...仲が良い事だな。」
スーツ姿の男が其処に立っていた。
彼奴は...バーサルトの教会にいた調整局員じゃないか。名前は確か...キース、だったかな。
其れにしても、嗚呼最悪だ。
ガキと公爵夫人が其の声に一際怯えたような声が聞こえた。
面識ありって事か。
「お前は...爆弾魔の時見た顔だ。成程(なるほど)、犯罪者だったのか。」
「犯罪者、犯罪者、うっせぇーな。何の御用だ、調整局員様よぉ。」
俺とキースの会話を固まって見ているガキに小声で言った。
「早くしろ。時間稼ぎくらいはしてやる。」
「セルリア...。」
名前を呼ばれたが俺は返事をする事はなかった。
ポケットからナイフを取り出すと、挑発がてらキースに突き付けた。
案の定其れに乗ったキースは懐から拳銃を取り出した。
見た事ある銃だ。自動拳銃のグロッグ17じゃねぇーか。
確か口径9mmだったっけか。装弾数は17発だった気がする。
こっちは飛び道具持ってねぇーぞ。
最悪にも程あるってもんだろ。
「セルリア。あれ知ってる?」
「知ってるけど。如何したのかよ。」
「装弾数は?」
「17発だと思うぜ。」
「17発か...。沢山だね~。」
17発と数えられる弾数だから沢山とは言い難いがな。
とは悠長に言ってられない。キースは早速撃ち始めた。容赦の無い事だ。
俺は前方へ前進しキースの意識を俺に集中させる。
あの2人に死なれては仕事にならないからな。
「掛かったな。」
キースはそう呟いて微笑んだ。
まさか...。
角の向こう側から女が現れた。
此奴もバーサルトの教会にいた調整局員だ。そう言えば一緒に居たな。マロンだったか。
「あたし銃とか初めてなんっスよッ!!!」
マロンは目を瞑り叫びながら引き金を引いた。
目瞑って引き金引く阿呆がいるか。
だが其のおかげで弾道が大幅にズレている。銃弾は俺に当たる事なく過ぎ去って行った。
「武器をまともに使った事無い人間には荷が重かったようだな!!調整局員ッ!!」
ナイフを握り締めキースの胸元に突き立てた。
硬い...防弾チョッキか。用意周到だな。
ナイフを引き銃を持っている腕を狙う。逆手に握り直し切りつける。
簡単にいく筈もなく器用に銃で受け流された。
ナイフを押し進めるのは得策ではないな。完全にナイフを意識しているから、反応速度が速い。とてもじゃないがナイフの攻撃は厳しい。
フェイクでも掛けてみるか...。
逆手のまま首元を狙う。案の定、銃でカバーしようと銃を首元へ持って来た。
其の隙を狙ってナイフとは反対側から蹴りを入れる。
油断していたのか蹴りは素直に入った。
キースが揺らめく。
だがこの程度でダウンしてくれる筈もなく、キースは此方を睨み付けている。
俺は再びキースの懐に入り込みナイフで応戦した。
やはり警戒が強い所為か、刃は一向に届かない。俺も銃を持ってくるべきだったな。今更ながら後悔した。
銃声が鳴り響く銃弾が俺の腕を貫いた。嗚呼最悪だ。
しかし利き腕ではなかった事が幸いだ。
「チッ...。」
「舌打ちとは、余裕だな。」
キースが俺の両肩を握りしめ、腹部に膝で蹴りを入れた。
胃酸が口内に染み渡る。実に不快だ。
キースは両肩を離すとマロンの方に俺を蹴り飛ばした。
マジで容赦ねぇー。
「マロン、撃て。」
「むむむ、無理っスよッ!!あたし殺しとか嫌ッスよ!!そもそもこれバレたらヤバイっスよ!!」
「良いから撃て。」
「キース先パイ!!!」
「撃て。」
「先パイらしくないっスよ...。」
何だ、私情で来たのか。
俺は素早く起き上がりマロンの背後を取った。ついでに銃も。
首を腕で締めあげる。勿論本気ではない脅しでだ。
「調整局員。手前ェ私情で此処に来ただろ。まるで殺人鬼だな。」
「違う。俺は正当な事をしている。」
「正当?...だったら自分の面(つら)鏡で見てみろよ!!俺等と同じ目だぞ、そりゃ!!」
「貴様の戯れ言など聞いている暇などない!!」
仲間を盾にしているというのに、銃口が一切ブレていない。
何て野郎だ...。
「ドールッ!!!来い!!」
キースが引き金を引き切る直前。
背後にドールが見えた。
「命令するなよ。兄さんでも無い癖に。」
悪態を付きながら...。