第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
ドールの拳がキースに直撃した。其の光景に呆気に取られているマロンの右腹部を銃で撃った。
殺す気は無い、唯此処でリタイアしてもらう為だ。
撃たれた腕が悲鳴を脳に伝える。これは暫くはケビンを外に出してやれないな。
まぁ、銃で撃たれた事なんて初めてではないが...。
こうも簡単に撃たれてしまうとは、鍛え直すか。

キースはドールの拳により数m飛ばされた。
しかし痛む体に鞭を打ってキースは立ち上がった。
其のまま眠ってしまえば楽だっただろうに。


「セルリア~殺す?」

「後が面倒だろ。気絶させりゃー丸く収まるだろ。」

「んフフ~どっちが殺る?」

「いや、だから殺らねぇーって...。」


ドールと話している最中に俺の足首を誰かが掴んだ。
誰か...なんて考えるまでもない。マロンだ。

血が溢れ出る患部を押さえつつ、腹這いになって俺の足首を掴んでいる。
息が荒く少し汗も見える。表情は苦痛そのものを伝えている。


「何してんだ。死に損ない。」


手を振りほどく事なく言った。


「や...止めて、っス...。」

「何もしてぇーぞ。」

「セルリア、知り合い?」


何しらばっくれてんだ。バーサルトの教会で出会っただろ。
いや...、ドールの事だギフト以外眼中にさえ入っていないのだろう。


「知らねぇー。」

「そ~。」


マロンの手に力が篭る。俺に何を訴えてんだ。


「キース先パイを殺さないで下さいっスッ!!!」

「誰も殺すなんて言ってねぇーだろ。其れに叫ぶんじゃねぇーよ。折角助けてやった命を散らす気か?」


俺はしゃがんでマロンの手を足首から離した。
睨んでいるのか、其れ共痛みで表情が険しいのか、俺にとっては如何でもいい事だがマロンの顔は女には似合わない顔だった。
マロンの口元を右手で掴んだ。


「安心しろ。キースを殺る時はお前の目の前で全身を切り開いてやるからよ。」

「マロンに何をしてる。犯罪者...。」


頑丈な奴だな。全身打撲で身体中が痛い筈なんだが。
相当訓練しているって事か。何かムカつくな...俺もやっぱ鍛えよう。


「わぁ!凄~い、よく此処まで歩いて来れたね。ボク褒めちゃおっかな。」

「黙れ...ッ!。」


大丈夫なのは見てくれだけか。体力面、身体面ではドールの拳が効いたようだな。


「なぁ、お前...あ~キースって言うんだっけ?」

「セルリア、何する気?」


こういう時は異様に早く悟るな...お前は。
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