第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
「お前は黙ってろよ。
で、キースさんよぉー。俺と取り引きしねぇーか?」

「何が好きで犯罪者などと...」


やっぱ上手くいかないか。
相当犯罪者に恨み持ってるみたいだからな。
まぁ、これは俺でも予想出来ていた事だ。
俺は床に腹這いになっているマロンの腕を掴み上げた。
銃で撃たれたがまだ辛うじて動く残りの腕でマロンに銃を構えた。


「貴様ッ...!」

「外道って言いたいんだろ。ンな事は俺自身よく知ってる。
だが今はそんな事を言いたいんじゃねぇー。
取り引きだ。」

「ッ...」


今にも噛み殺しそうな顔するなよ。


「簡単な話だ。
この女の命を守ってやる代わりに、お前は俺等に手を貸せ。」

「そんな条件が飲めるか。」


有無を言わず吐き捨てた。
頑固な男だな...。
さっさと言う事を聞けば話は早いのに、あ゙ぁ面倒臭ぇ。
調整局員ってのは皆こう頑固なのか。


「嫌なら其れで良いぜ。ただし帰りは1人になるけどな。
お前には到底無理だろ。憎き犯罪者に仲間を殺されるのはよ!!
アハハハッ!!」


つい笑い声を上げてしまった。
だってこう言ったらキースは絶対怒るだろ。
面白いだろ。
傷口抉るってのは。


「セルリア、セルリアってば!」


ドールが肩を叩く。
今面白い所だろ。状況見て入って来いよ。


「何だよ...」

「もっと冷静になりなよ。取り引きできないでしょ。」


あぁー...そう言えば其の話をしていたんだな。
脱線してた...。


「悪ぃ。」

「こ、怖いっス...キース先パイ...」

「怖くはねぇーだろ。」

「セルリア、話を進めようよ。」


キースの視線が先程より鋭い気がする。
挑発に乗ったのか。
いや...何か違う。挑発に乗ったにしてはやけに落ち着いている。
何故だ。


「セルリア、で間違いないのか。」


大きい声ではないが、不思議と胸の中に深々と刺さった。

何で俺の名前を聞くんだ。


「其れが如何した?」

「10年前の殺人鬼の真似事か...」

「んだと手前ェッ!!」

「セルリア落ち着いて!
えっと...キースって言うんだっけ。
君が言わんとしている事は大体予想が付いている。
でも、今は如何でもいい事だ。其れは君にも解っている筈だ。
話を戻そうか。
君は此処に居る女と無事に帰る為にボク達に協力する?
其れ共寂しく1人で帰る?
君にこの2択を選んでもらう。さぁ如何する?」


あれ...ドールってこんなに頭が良い奴だったか。
何時もギフトみたいにヘラヘラしていて、病的と言ってもいい程ギフトを信仰していて...操り人形のようにギフトの言う事しか聞かないとばかり思っていたのに。
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