第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
side:ドール
廊下を駆ける。
身体が火照る。熱い、暑い、あつい、アツイ...。
脈打つ心臓が息苦しくて、目頭からは生温かい生理的な涙が溢れ出る。
兄さんが“ボクだけ”を頼ってくれた。
歓喜の波がボクを溺死させようとしていた。
ジッとなんてしていられない。大きく体を動かして置かなければ、心臓発作で死んでしまう。
冗談では無い、本当の事だ。
この感情を内に秘めておくには、ボクの胸の広さが足りない。張り裂けてしまう。
其れはとても幸福だ。他人が不幸と言うのなら殺さなくてはいけない。
だってこんな幸せな事が解らないなんて、死に値する事以外何があると言うのだろうか。
死ななければいけないんだよ。
ボクは廊下を駆ける。駆けている。
「ハァ♥兄さんから♥電話♥♥兄さんが♥僕だけに♥命令してくれた♥♥やっぱり兄さんの♥1番は♥ボクなんだ!!♥♥♥」
嗚呼幸せだ。
これ以上の幸せは存在してはいけない。
存在したらボクは兄さんの1番に成れないし、兄さんはボクを捨ててしまうし、そうしたらボクは要らないモノになっちゃうし...。
...簡単な話だ。
そんな物、壊してしまえば良いんだ。
阻止しなくては、何をしても、犠牲にしても、喪っても、ボクが駄目になっても...。
空を掻く音、火薬の臭い、足元に出来た円上の焦げ跡。
僕を狙っている事は明白だった。
焦る事は無い。焦る必要が無い。
ボクは割と“頑丈”な部類に入るから。
「何処に居るの〜?隠れてないで出て来なよ〜!お互い早く終わらせたいでしょ?ねぇ〜ってば〜!!」
と言って、出て来てくれたら互いに苦労しない。何故出て来ない。如何やってもボクが殺して終わるだけだと言うのに...。
普通の人間は簡単に殺れるって兄さんが言っていたんだもん。
間違いなんか無いよ。
相手が銃を持っている事は先程の狙撃で明らかになっている。相手から見てボクは完全な丸腰。狩猟の気分と言ったところだろうか。
そうだね...“傍から見たら”そう見えるだろうね。
黒虎兄さんやセルリアが言っていた。
相手が武器を持っている時、決して焦るな。冷静でいろ。と、
冷静に、冷静に、考える。兄さん以外の事を考えるのは苦手だ。
ボクの頭の中から兄さんが居なくなってしまうから。
深く息をつく。
弾は上から来た。上だ。
相手は予想していたより随分と安息の地に身を隠していたのか。
其れが仮初と知らずに、哀れな者だ。
ボクは床を思いっきり蹴り上げた。体は面白い程軽々と飛び上がり、腕を伸ばせば天井を簡単に触れる事が出来た。
天井に腕を突き立てる。其の際に人の腕と思しき筒上の物を掴んだ。
必死に逃れようとしているのがとても可笑しな行為だとボクは鼻で笑った。
もう一方の手で天井の一部を剥ぎ取る。中には血相を変えた男が悲鳴を上げそうな表情でボクを出迎えた。
「化け物ッ!!!!ああ゙!!離せ離せ離せ!!!」
「やぁ、初めまして。其処に居たんだね。恥ずかしがり屋なの?」
「うわぁぁぁああ!!!!あ゙ぁああ!!!」
「五月蝿いな...。軍人さん、なんでしょ。だったらもっと静かにしてなきゃ、ね。」
男は必死に逃げようと銃口をボクに向け引き金を指を掛けようとしている。
其れを阻止する為にボクは男の腕を握り潰した。
肉を押し潰す触感と 硬い骨を粉砕するコリコリとした感覚が掌に伝わる。
「あ゙あ゙ぁぁぁあぁぁああぁああ!!!!!!!!!!!!
離せ!!!!化け物ッ!!!化け物!!!!」
ボクは嗤う。
「知ってるよ。そんなの。」
空いている手で天井の出っ張りを掴み、男を引きずり出した。
男は凄惨な形となった腕を命綱に、ブラブラと滑稽に揺れている。
恐怖からか歯の鳴る音が耳に入る。
「ねぇ、知ってるんだよ。そんなの。馬鹿じゃないの?」
「ハァ...はぁ、あ゙ぅ...あ゙...」
「怖くて喋れないの?良い大人なんだからしっかりしなよ。でも、安心して、ボクと“こういう事”する人達は、大抵こうなるから。安心して良いんだよ。」
にっこりと微笑むと、ボクは男の腕を今一度強く握りしめ振り下ろした。
バットを降った音に似た音が鳴り、男は床に叩き付けられた様だ。
遠くで瑞々しい音が聞こえた。
ボクも天井から手を離し、無事床に着地する。
兄さんの言う通り簡単に終わってしまった。
兄さんの好きな撲殺は出来なかったけど、其れと似た形になったから良しとしようか。
ボクはふと思い出した。
嗚呼まだ握っていた...。
ボクは其れを肉塊の上に放り投げた。
だって、要らないでしょ。
兄さんが電話してきたって事はあらかた終わっているって事だ。
わざわざセルリアと合流するのは面倒だし、会うのなら兄さんが良い。
集合場所は『九尾の道楽』だったし...、もう帰っちゃおう。
ボクは屋敷の外へと向かった。
廊下を駆ける。
身体が火照る。熱い、暑い、あつい、アツイ...。
脈打つ心臓が息苦しくて、目頭からは生温かい生理的な涙が溢れ出る。
兄さんが“ボクだけ”を頼ってくれた。
歓喜の波がボクを溺死させようとしていた。
ジッとなんてしていられない。大きく体を動かして置かなければ、心臓発作で死んでしまう。
冗談では無い、本当の事だ。
この感情を内に秘めておくには、ボクの胸の広さが足りない。張り裂けてしまう。
其れはとても幸福だ。他人が不幸と言うのなら殺さなくてはいけない。
だってこんな幸せな事が解らないなんて、死に値する事以外何があると言うのだろうか。
死ななければいけないんだよ。
ボクは廊下を駆ける。駆けている。
「ハァ♥兄さんから♥電話♥♥兄さんが♥僕だけに♥命令してくれた♥♥やっぱり兄さんの♥1番は♥ボクなんだ!!♥♥♥」
嗚呼幸せだ。
これ以上の幸せは存在してはいけない。
存在したらボクは兄さんの1番に成れないし、兄さんはボクを捨ててしまうし、そうしたらボクは要らないモノになっちゃうし...。
...簡単な話だ。
そんな物、壊してしまえば良いんだ。
阻止しなくては、何をしても、犠牲にしても、喪っても、ボクが駄目になっても...。
空を掻く音、火薬の臭い、足元に出来た円上の焦げ跡。
僕を狙っている事は明白だった。
焦る事は無い。焦る必要が無い。
ボクは割と“頑丈”な部類に入るから。
「何処に居るの〜?隠れてないで出て来なよ〜!お互い早く終わらせたいでしょ?ねぇ〜ってば〜!!」
と言って、出て来てくれたら互いに苦労しない。何故出て来ない。如何やってもボクが殺して終わるだけだと言うのに...。
普通の人間は簡単に殺れるって兄さんが言っていたんだもん。
間違いなんか無いよ。
相手が銃を持っている事は先程の狙撃で明らかになっている。相手から見てボクは完全な丸腰。狩猟の気分と言ったところだろうか。
そうだね...“傍から見たら”そう見えるだろうね。
黒虎兄さんやセルリアが言っていた。
相手が武器を持っている時、決して焦るな。冷静でいろ。と、
冷静に、冷静に、考える。兄さん以外の事を考えるのは苦手だ。
ボクの頭の中から兄さんが居なくなってしまうから。
深く息をつく。
弾は上から来た。上だ。
相手は予想していたより随分と安息の地に身を隠していたのか。
其れが仮初と知らずに、哀れな者だ。
ボクは床を思いっきり蹴り上げた。体は面白い程軽々と飛び上がり、腕を伸ばせば天井を簡単に触れる事が出来た。
天井に腕を突き立てる。其の際に人の腕と思しき筒上の物を掴んだ。
必死に逃れようとしているのがとても可笑しな行為だとボクは鼻で笑った。
もう一方の手で天井の一部を剥ぎ取る。中には血相を変えた男が悲鳴を上げそうな表情でボクを出迎えた。
「化け物ッ!!!!ああ゙!!離せ離せ離せ!!!」
「やぁ、初めまして。其処に居たんだね。恥ずかしがり屋なの?」
「うわぁぁぁああ!!!!あ゙ぁああ!!!」
「五月蝿いな...。軍人さん、なんでしょ。だったらもっと静かにしてなきゃ、ね。」
男は必死に逃げようと銃口をボクに向け引き金を指を掛けようとしている。
其れを阻止する為にボクは男の腕を握り潰した。
肉を押し潰す触感と 硬い骨を粉砕するコリコリとした感覚が掌に伝わる。
「あ゙あ゙ぁぁぁあぁぁああぁああ!!!!!!!!!!!!
離せ!!!!化け物ッ!!!化け物!!!!」
ボクは嗤う。
「知ってるよ。そんなの。」
空いている手で天井の出っ張りを掴み、男を引きずり出した。
男は凄惨な形となった腕を命綱に、ブラブラと滑稽に揺れている。
恐怖からか歯の鳴る音が耳に入る。
「ねぇ、知ってるんだよ。そんなの。馬鹿じゃないの?」
「ハァ...はぁ、あ゙ぅ...あ゙...」
「怖くて喋れないの?良い大人なんだからしっかりしなよ。でも、安心して、ボクと“こういう事”する人達は、大抵こうなるから。安心して良いんだよ。」
にっこりと微笑むと、ボクは男の腕を今一度強く握りしめ振り下ろした。
バットを降った音に似た音が鳴り、男は床に叩き付けられた様だ。
遠くで瑞々しい音が聞こえた。
ボクも天井から手を離し、無事床に着地する。
兄さんの言う通り簡単に終わってしまった。
兄さんの好きな撲殺は出来なかったけど、其れと似た形になったから良しとしようか。
ボクはふと思い出した。
嗚呼まだ握っていた...。
ボクは其れを肉塊の上に放り投げた。
だって、要らないでしょ。
兄さんが電話してきたって事はあらかた終わっているって事だ。
わざわざセルリアと合流するのは面倒だし、会うのなら兄さんが良い。
集合場所は『九尾の道楽』だったし...、もう帰っちゃおう。
ボクは屋敷の外へと向かった。