第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
side:ギフト
ハートの女王を背負い左右にフェスターニャと男を付けて集合地である『九尾の道楽』へと向かっている。
つい先程、電車内でメールを送っていた黒虎兄さんから返事が届いた。
廃墟にいる『不思議の国』のメンバーを無事保護出来たとの事だ。実に良い知らせだ。
そろそろ頃合いだろうし、各々で集合地に向かっているだろう。
結局僕達は伯爵に会わなかったが、セルリアやドールが殺ってるだろう。確証は無いが何となくそう思った。例え殺り損ねていたとしても、無一文の貴族にこの国は冷たい。良くて“遊び道具”か、悪くて餓死かな。いや、逆かな?
「そろそろ出口だ〜。あー楽しかった。」
ほんの少し思った事を口に出してみる。
「マスターが楽しかったのなら私も同じです!」
フェスターニャが嬉々として応える。正直、心底面倒だが微笑みを返しておく。
一体何がフェスターニャの楽しみだったのか皆目検討が付かない。
「こんなの...楽しくなんか、ないよ。」
細々と男が呟く。本音だろうと僕は思った。
男は憔悴しきっていて、顔色も良くない。
仮でも殺し屋を名乗っているのに、何故堪えているのだろうか。
「君達も沢山殺したでしょ?なら、其の楽しさを知っている筈だよ。現に調整局の御前で殺しただろ。」
少々煽る様に男に言う。
煽る事に特に意味は無い。唯、そう、気まぐれだ。
僕の言葉に男は激しく首を横に振った。酷く動揺しているのは馬鹿でも解る。
一体如何言う事だ。
「違う!ボク等の意思じゃない!!
だって、そうすれば!!演じきれば!い、言われたんだ!!!助けてくれるって言った!!だから!!」
引っ掛かる...。
“ボク等意思じゃない”
“演じれば”
“助けてくれる”
一体誰が?
現状を見るからにして『不思議の国』を助けているのは僕達『Sicario』だ。
となれば、これを、この状況全てを仕組んだ奴がいる。
誰かが、僕の知らない所で...糸を引いている。
全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部。踊らされた...。プレイヤーは僕だけだった筈だ。何時からだ...僕を駒にしたのは、何者だ、誰だ、誰だ。
笑える...この僕が駒?笑えるねぇ...。
1つ息を吐いた。
笑えない冗談だ。
「アハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!!!!!!!!!
何だ其れ!!?アハハ!!!!笑える!!」
おかしくなったと思われたのか、場は一瞬にして何かが張り詰めた。誰も何も言わない。言えない。
2人が異物を見る目で、僕を見ているのが見える。
「あ゙ぁ!!詰まらない!!!ムカつくッ!!不服だッ!!誰だ!?誰だ!!!誰に言われたッ!!?言え!!捨て駒!!!」
男の胸倉を掴んで詰め寄る。何時もの様に演じる事はしなかった。濁される理由には行かないからだ。此れ位の形相なら言い逃れ出来るのは思わないだろう。あ、此れも演技に入るね...。
「ら、楽園」
震えながら男は口を開き出した。
「楽園が...手を差し伸べたんだ。ボク等は、...取っただけ、......本当に、其れだけなんだ...」
「楽園...楽園ね...。なーんだ、そう言う事ね...。そう言う、事ね....クソったれが!!!」
男を突き飛ばして、地団駄を踏む。久しぶりに頭に来た。僕達を駒として扱うなんて、嗚呼絶対に殺してやる。そうだな...1ヶ月掛けて、ゆっくり殺してやる。
少し頭が冷めた頃には、爆薬の様に僕は見られていた。
咳払いをして普段の笑顔を作った。
「ごめんね...、ちょっと取り乱しちゃって...さ、行こーじゃないか。」
ふつふつと胸の内で燃え広がろうとする激情を抑える。沈まれ、静かにしろ。何度も呟く。
生来、僕は堪え性が無い。我慢が何より苦手だ。嫌な事は“消せ”ば良いからだ。ずっとそうしてきた。だがナタリアの診断を受けて其れが病だと初めて知った。人間は他人の気持ちが解らないモノと思っていたから、其れ成りにショックは受けた。だが其れが解ったとしても、僕が変わる訳もなく...。正直病気など如何でも良い。大事なのは其れが僕だと言う事だ。共感能力が無かろうが責任能力が無かろうが、此れが僕なんだ。
まだ腫れモノと認識されている。実際そうなのだろう。否定はしない。
フェスターニャへ顔を向ける。
「先に行っててくれるかい?
僕は“落し物”を取ってくるからさ。」
「落し物なら、私が...」
「自分の物位自分で取ってくるさ。彼女を頼んだよ。それじゃ。」
ハートの女王をフェスターニャに任せて、僕は来た道を戻って行く。“落し物”はモガルだ。早くあの瞳の元へ向かおう。気絶しているのならあの瞳を舐めても大丈夫だよね。
早くこの煩わしい気持ちから開放されたい。瞳だ、其れにはあの極上の瞳___『星目』が必要だ。
ハートの女王を背負い左右にフェスターニャと男を付けて集合地である『九尾の道楽』へと向かっている。
つい先程、電車内でメールを送っていた黒虎兄さんから返事が届いた。
廃墟にいる『不思議の国』のメンバーを無事保護出来たとの事だ。実に良い知らせだ。
そろそろ頃合いだろうし、各々で集合地に向かっているだろう。
結局僕達は伯爵に会わなかったが、セルリアやドールが殺ってるだろう。確証は無いが何となくそう思った。例え殺り損ねていたとしても、無一文の貴族にこの国は冷たい。良くて“遊び道具”か、悪くて餓死かな。いや、逆かな?
「そろそろ出口だ〜。あー楽しかった。」
ほんの少し思った事を口に出してみる。
「マスターが楽しかったのなら私も同じです!」
フェスターニャが嬉々として応える。正直、心底面倒だが微笑みを返しておく。
一体何がフェスターニャの楽しみだったのか皆目検討が付かない。
「こんなの...楽しくなんか、ないよ。」
細々と男が呟く。本音だろうと僕は思った。
男は憔悴しきっていて、顔色も良くない。
仮でも殺し屋を名乗っているのに、何故堪えているのだろうか。
「君達も沢山殺したでしょ?なら、其の楽しさを知っている筈だよ。現に調整局の御前で殺しただろ。」
少々煽る様に男に言う。
煽る事に特に意味は無い。唯、そう、気まぐれだ。
僕の言葉に男は激しく首を横に振った。酷く動揺しているのは馬鹿でも解る。
一体如何言う事だ。
「違う!ボク等の意思じゃない!!
だって、そうすれば!!演じきれば!い、言われたんだ!!!助けてくれるって言った!!だから!!」
引っ掛かる...。
“ボク等意思じゃない”
“演じれば”
“助けてくれる”
一体誰が?
現状を見るからにして『不思議の国』を助けているのは僕達『Sicario』だ。
となれば、これを、この状況全てを仕組んだ奴がいる。
誰かが、僕の知らない所で...糸を引いている。
全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部。踊らされた...。プレイヤーは僕だけだった筈だ。何時からだ...僕を駒にしたのは、何者だ、誰だ、誰だ。
笑える...この僕が駒?笑えるねぇ...。
1つ息を吐いた。
笑えない冗談だ。
「アハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!!!!!!!!!
何だ其れ!!?アハハ!!!!笑える!!」
おかしくなったと思われたのか、場は一瞬にして何かが張り詰めた。誰も何も言わない。言えない。
2人が異物を見る目で、僕を見ているのが見える。
「あ゙ぁ!!詰まらない!!!ムカつくッ!!不服だッ!!誰だ!?誰だ!!!誰に言われたッ!!?言え!!捨て駒!!!」
男の胸倉を掴んで詰め寄る。何時もの様に演じる事はしなかった。濁される理由には行かないからだ。此れ位の形相なら言い逃れ出来るのは思わないだろう。あ、此れも演技に入るね...。
「ら、楽園」
震えながら男は口を開き出した。
「楽園が...手を差し伸べたんだ。ボク等は、...取っただけ、......本当に、其れだけなんだ...」
「楽園...楽園ね...。なーんだ、そう言う事ね...。そう言う、事ね....クソったれが!!!」
男を突き飛ばして、地団駄を踏む。久しぶりに頭に来た。僕達を駒として扱うなんて、嗚呼絶対に殺してやる。そうだな...1ヶ月掛けて、ゆっくり殺してやる。
少し頭が冷めた頃には、爆薬の様に僕は見られていた。
咳払いをして普段の笑顔を作った。
「ごめんね...、ちょっと取り乱しちゃって...さ、行こーじゃないか。」
ふつふつと胸の内で燃え広がろうとする激情を抑える。沈まれ、静かにしろ。何度も呟く。
生来、僕は堪え性が無い。我慢が何より苦手だ。嫌な事は“消せ”ば良いからだ。ずっとそうしてきた。だがナタリアの診断を受けて其れが病だと初めて知った。人間は他人の気持ちが解らないモノと思っていたから、其れ成りにショックは受けた。だが其れが解ったとしても、僕が変わる訳もなく...。正直病気など如何でも良い。大事なのは其れが僕だと言う事だ。共感能力が無かろうが責任能力が無かろうが、此れが僕なんだ。
まだ腫れモノと認識されている。実際そうなのだろう。否定はしない。
フェスターニャへ顔を向ける。
「先に行っててくれるかい?
僕は“落し物”を取ってくるからさ。」
「落し物なら、私が...」
「自分の物位自分で取ってくるさ。彼女を頼んだよ。それじゃ。」
ハートの女王をフェスターニャに任せて、僕は来た道を戻って行く。“落し物”はモガルだ。早くあの瞳の元へ向かおう。気絶しているのならあの瞳を舐めても大丈夫だよね。
早くこの煩わしい気持ちから開放されたい。瞳だ、其れにはあの極上の瞳___『星目』が必要だ。