第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
幸いティーカップの中は空だった。
ディーブ君も察しがついたような顔をする。
ギフトさんが笑顔で言う。


「そうだ...僕とした事が、こんな簡単な事に気付かないなんて...。変えられるのは、外見だけ...中身は変わらない。」

「...例えば、臭い...とか。体臭は香水でどうにか出来ても、口臭とかなら...」


この2人が閃いたのなら、僕の出番はお終いです。


「...すいません。もう、戻りますね...。依頼、頑張って下さい。」


2人から別れの言葉を貰うと、僕はまた意識の波に呑まれた。
入れ替わる間際にセルリアと出会った。


“どうだった...?久しぶりの外は”

“楽しいけど...やっぱり僕は、君の影で過ごしていた方が、割に合うよ。”

“この体は、お前のなんだぜ。”

“そうだとしても、僕より君の方が相応しい。...君に任せっきりなのは、僕もじかk”


セルリアが僕の頭を撫でてくれた。
もう何も言うな、僕には彼がそう言っているように思えた。
君に優しくされたら、僕はどうすれば良いんだい。

そのままセルリアは何も言わずに、暗闇の意識から去って行った。
頭を撫でられた感覚が仄かに残っていて、ムズ痒いけどどうしようもなく嬉しかった。
< 30 / 277 >

この作品をシェア

pagetop