第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
俺は女の頬に右手を添える。


「言ってみろ、何が恐ろしいんだ?さっきまであんなに勝ち気だったじゃねぇーか?如何したんだ?ん?言わなきゃ解んねぇーって、俺はただ聞いてるだけなんだぜ。」


震えている女の顔を覗き込む。
女の目は俺を捉えたまま動かない。


「んー?ほら、口を動かさなきゃ解んねぇーって。」


カチカチと歯を鳴らしながら、漸く女は口を動かした。


「こ、こわ...い、あ、あ..なたが...わから..な、い」


言葉さえ上手く紡げなくなっている女を、俺は抱きしめた。
女の喉元に顔を埋める。やっぱり女だからか、ノーリスト街で殺したホームレスより良い匂いがした。


「い、や...いや、よ...」

「んん?何が嫌なんだ?...よッ!!」


俺は抱きしめる際に出したナイフを、女の背中に突き立てた。
女が耳元で叫ぶ。俺はそれを宥める様に、頭を撫でてあげた。
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