第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
離れたところにいるディーブの声が聞こえた。


「...家に戻って、ギフトに聞けばいい。」

「其れもそーだな。」


面倒な事は全てギフトに任せよう。
怪我人だか何だか知らないが、頭は働くだろう。
今すぐ家に行くのも疲れるし、暫くは此処にいて休もう。

俺はやけに静かになっているサラフィリアを見た。
あんなに暴言を吐きまくっていたのに、突然大人しくなって...。
大人しい事に越したことはないのだがな。

この際だ、色々聞いてみるのもいいかもしれない。
視線をサラフィリアに移す。


「おい、何であんな事したんだ?」


サラフィリアはビクッと身を震わせた。
怯える事でもないだろう。
呆れながら俺はサラフィリアを見ていた。
サラフィリアは少し口ごもりながら、俺の質問に答えた。


「わ、笑うんじゃねぇぞ...ウチはさぁ、その...性癖って言うのか?まぁ、そんな感じのやつなんだけど、...人が怯えている顔が...好きなんだ......。」


所詮サラフィリアも、俺達と同類というわけか。
其の答えを笑う事も、ましてや嫌悪感を抱く事も無かった。
嗚呼、なんだそんな事かと、酷く素直に受けいれることが出来た。


「...お、おかしいとか...おもんないのか?」

「あ゙?お前が笑うなって言ったんだろ。其れに、んなもん普通だ。」


まだ正常だよ。お前は...。
俺達はもっと、もっと...深いところにいる。
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