第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
side:キース
なんとか爆風を凌ぐことが出来たが、肌が少し熱い。
スーツが少し焦げている。
これはもう捨てるしかないな。勿体無い。
スーツも無料ではないのだ。給料でやりくりしなくては...。
暫くインスタント生活は免れないな。

焦げ臭い電車内を見回す。
殆ど原形は残っておらず、哀れな金属が剥き出しになっている。
いくら見回しても、求めているものが視界に入らない。


「...何処だ?」

いない...あいつが、...マロンがいない。

「チッ...」


つい舌打ちが漏れた。
他の乗客たちは、個人で逃げている。
だが、そんなものどうでもいい。
俺の胸の内には不安と焦り...恐怖が渦巻いていた。




あの時と同じ失う恐怖だ...。


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