第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
話を聞くところによると、その男性は付き合っている女性に浮気されているらしい。それが許せないらしく、殺して欲しいという依頼を持ってきたようだ。
たかが浮気ごときで大袈裟な。単に早くその女を捨ててしまえば事は終わるだろうに…。
何でも婚約を目の前にしてこの事が解ってしまったので、この男性は相当ショックを受けたらしい。
この気弱そうな顔からして立ち直れる見込みなんて無いしな。
女を見る目がなかったのだろう。顔からしてすぐ女に堕ちそうだしな。
在り来たりな内容にギフトはかなり興醒めしていた。大きな溜息までついている。
ギフトはこの男性に何を求めていたんだ。
「つまらない…なんて在り来たりなんだ…。」
顔を上に向け両手で口元を押さえつつギフトは言った。
その言葉に男性は気が触ったのか、椅子から立ち上がり、顔を赤くして怒鳴った。
「私にとって彼女がどれほど大事か知りもしないくせにッ!!!!!つまらないなんて言うなッ!!!」
怒鳴った所為か男性の息が荒い。
五月蝿い奴だな…。
俺はポケットナイフをジーパンから取り出すと、ナイフの刃を出し男性に向けて投げた。ナイフは男性の襟に刺さった。男性は腰を抜かし、床に倒れた。
さっきまで赤かった顔は、血の気が無くなり酷く青くなっていた。
俺は倒れた男性の元へ近付いてナイフを取った。俺は倒れている男性にわざわざ膝をつき、胸ぐらを掴んだ。鼻先が触れてしまう程顔を近付ける。
低い声色で俺は囁いた。
「手前ェ…一体誰に依頼をしているのか忘れんじゃねぇーよ。調子こいてると本当に殺すぞ。」
俺の方に誰かが手を置いた。振り向くと、ソファーで横になっていたはずのディーブだった。
「その人は調子になんか乗ってないよ。……後、やり過ぎ…。」
俺は男性を離した。
調子乗ってないって…あんなに怒鳴ったのにか。
考えても俺にはよく解らなかった。
俺はディーブに連れられソファーに座った。
「理解できねぇー。」
まだディーブの言ったことが理解出来ていない俺はディーブに呟いた。
ディーブは相変わらず無表情のままで、俺に見向きもせず言った。
「彼は怒ったんだ。彼は悪くない。」
「怒鳴ってたぜ...」
「気に障ったんでしょ。」
「それだけか?」
「それだけだよ。」
完全には理解出来ないが、先程よりは理解出来た気がする。だがやはり、人の感情は理解に苦しむ。10年前に生きていた時も今も。
人を殺すことで、感情までも殺していったのだろうか。それは無いな、俺は好きで人を殺すのだから。無理などしていない。
きっと生まれた時から、欠落していたのだろう。
気が付けば隣にいたディーブは、また横になっていた。
落ち着きを取り戻した男性は、暫くギフトと話した後、帰って行った。
たかが浮気ごときで大袈裟な。単に早くその女を捨ててしまえば事は終わるだろうに…。
何でも婚約を目の前にしてこの事が解ってしまったので、この男性は相当ショックを受けたらしい。
この気弱そうな顔からして立ち直れる見込みなんて無いしな。
女を見る目がなかったのだろう。顔からしてすぐ女に堕ちそうだしな。
在り来たりな内容にギフトはかなり興醒めしていた。大きな溜息までついている。
ギフトはこの男性に何を求めていたんだ。
「つまらない…なんて在り来たりなんだ…。」
顔を上に向け両手で口元を押さえつつギフトは言った。
その言葉に男性は気が触ったのか、椅子から立ち上がり、顔を赤くして怒鳴った。
「私にとって彼女がどれほど大事か知りもしないくせにッ!!!!!つまらないなんて言うなッ!!!」
怒鳴った所為か男性の息が荒い。
五月蝿い奴だな…。
俺はポケットナイフをジーパンから取り出すと、ナイフの刃を出し男性に向けて投げた。ナイフは男性の襟に刺さった。男性は腰を抜かし、床に倒れた。
さっきまで赤かった顔は、血の気が無くなり酷く青くなっていた。
俺は倒れた男性の元へ近付いてナイフを取った。俺は倒れている男性にわざわざ膝をつき、胸ぐらを掴んだ。鼻先が触れてしまう程顔を近付ける。
低い声色で俺は囁いた。
「手前ェ…一体誰に依頼をしているのか忘れんじゃねぇーよ。調子こいてると本当に殺すぞ。」
俺の方に誰かが手を置いた。振り向くと、ソファーで横になっていたはずのディーブだった。
「その人は調子になんか乗ってないよ。……後、やり過ぎ…。」
俺は男性を離した。
調子乗ってないって…あんなに怒鳴ったのにか。
考えても俺にはよく解らなかった。
俺はディーブに連れられソファーに座った。
「理解できねぇー。」
まだディーブの言ったことが理解出来ていない俺はディーブに呟いた。
ディーブは相変わらず無表情のままで、俺に見向きもせず言った。
「彼は怒ったんだ。彼は悪くない。」
「怒鳴ってたぜ...」
「気に障ったんでしょ。」
「それだけか?」
「それだけだよ。」
完全には理解出来ないが、先程よりは理解出来た気がする。だがやはり、人の感情は理解に苦しむ。10年前に生きていた時も今も。
人を殺すことで、感情までも殺していったのだろうか。それは無いな、俺は好きで人を殺すのだから。無理などしていない。
きっと生まれた時から、欠落していたのだろう。
気が付けば隣にいたディーブは、また横になっていた。
落ち着きを取り戻した男性は、暫くギフトと話した後、帰って行った。