イケメン同期に素顔を見抜かれました



「どうした、崎坂。目ぇまん丸くさせて」

自分のやった偉業にまったく気づいていない有村は、ケラケラと笑っていて。

「いや。ちょっと酔っぱらってきたのかも~」

私も、動揺を隠すようにちょっとおどけてみたりなんかして。

そうしたら、営業部の先輩に見つかった有村に声が掛けられて。

「じゃな、崎坂」

私の動揺は整理出来ないまま、有村は立ち去ってしまったんだ。




それからのことはあまりよく覚えていない。

とりあえず気分を落ち着かせる為にトイレに行って。

帰ってきたら、私の座っていた席には他の人が移動してきていて。

何となく元いた場所に戻りづらくなったので、端っこで寝ていたチーム長を叩き起こして、ぼーっとしているチーム長と一緒にぼーっとしていた。

ぼーっとしてても、なぜか視線は有村を追っかけていて。

久々のこういう感じを、知ってるけど知らないフリをしようとしていた。

そう、この感情に気付いてしまってはいけないから。




『うわぁ。待ち受け2ショットじゃん』

『いーだろ、別に』

『可愛い~。彼女?』

『……うん』




入社式の後の懇親会。

何気なく取り出した彼のスマホの待ち受けは、彼と彼女の2ショット。




そう。

彼の隣にはすでに、別の女の子がいるのだから。




だから私は、この気持ちに気付いてはいけないんだ。

そう、気付いてはいけないはずだったんだ。




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