イケメン同期に素顔を見抜かれました
会社まであと数メートルという位置に来たとき、正面から見知った顔が歩いてくるのが見えた。
「崎坂、おはよう」
「……おはよう」
いつも爽やかな有村は、私の気持ちを知らずにニコニコ笑顔を向けてくる。
「今日も暑いなあ」
「ホントだね。有村外回り大変でしょ?」
「うん、帰ってきた時の冷房の風にいつも命を救われてるよ」
「大げさな」
私の冷ややかな目線にもめげず、笑顔の有村。
その笑顔を見るたびに、私の心の中はキュン、と苦しくなる。
「んじゃ、崎坂。またな」
「うん、今日も頑張ろうね」
社員入口を入り、有村と別れる。
ビアガーデンのあの日からずっと、私の気持ちはモヤモヤしたままだ。
待ち受けを見たのが4月。
そして今は9月。
親友の紗希だったらきっと、「別れてるかどうか確認する」だろうし、「自分を見てもらえるように頑張る」ことを選ぶに違いない。
でも、そんな勇気のない私は、結局うじうじとしちゃっている。
間違いなく紗希に言われることはわかっているけど、それでも紗希に話を聞いてもらいたい。
今日、誘ってみようかな。
ふと思い立ち、カバンの中からスマホを取り出すのと、通知音が鳴るのは同時だった。
願ったり叶ったりの紗希からのお誘い。
私は迷わずOKの返事を返し、どこから話すか考え始めていた。