イケメン同期に素顔を見抜かれました



「乾杯」

最初にやってきたビールを飲んでいると、焼鳥が運ばれてきた。

お気に入りのつくねを食べて、目を丸くする。

「うわ、美味しい~っ」

「だろ?」

得意げな表情の有村に、少し胸がキュン、となる。

「他も美味しいから。どんどん食えよな」

「うん」

美味しい料理を口にすると、どんどん幸せな気持ちになってくる。

もちろん、仕事の失敗はちゃんと反省しないといけないけれど。

でも、その失敗を活かして明日からも頑張ろうって、そういう気持ちになってくる。

まだまだ素直になれない私は、「ありがとう」の言葉を有村に言うことが出来ず、運ばれてくる料理に舌鼓を打つばかりだった。




「え? 崎坂ってもう誕生日過ぎてんの?」

何かの話から誕生日の話題になり、私が5月生まれということを告げると、有村が驚きの顔を浮かべた。

「うん。5月生まれだから芽衣」

「あー……、英語でメイだもんな、5月」

「ちなみにお姉ちゃんは3月3日生まれだから雛子。単純でしょ?」

「え!? お姉さんの名前、サツキじゃねぇの?」

「……私、月夜の晩にオカリナ吹いたりとかしてないからね」

「とうもろこし持って道に迷って……」

「迷いません」

スパッと一刀両断すると、ケラケラと有村が笑い出す。

有村の笑顔には魔法があるんだろうか。

私も自然と笑顔になれる。

「有村は? 誕生日いつ?」

途端に有村の表情が少し曇る。

そして、言いにくそうに口を開いた。

「今日」

「今日?」

知らなかった。

まさに今日、有村の誕生日当日だったなんて。




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