イケメン同期に素顔を見抜かれました
「大学入ってさ、親元離れて一人暮らし始めて。バイト先に可愛い女子高生がいて、『付き合ってください』って言われたら、心も動くだろ?」
「……まあ、そうかもね」
「あん時は天使みたいに可愛かったんだけどなあ」
私たちの間に流れた暗い空気を吹き飛ばそうと、冗談めいて有村は言うけれど。
寂しそうな笑顔が、有村の本音を語ってる。
本当は、ケンカなんてしたくない。
時間が作れるならば、いつでも会いたい。
真理ちゃんのことを、まだ信じたい。
って、寂しそうな笑顔が語ってる。
「ごめん」
「崎坂?」
いきなり立ち上がった私を見て、不思議そうな顔をする。
でも、私にはもう限界なの。
これ以上、真理ちゃんのことを愛おしそうに語る有村を見ていることは出来ない。
「ここは同期らしく、『大丈夫だよ。きっと話し合えば彼女もわかってくれるよ』とか言ってあげればいいんだろうけど。でもごめん、私そんな風に励ましたりとか出来ない」
「…………」
「私には好きな人と付き合ってるのに浮気しちゃう人の気持ちなんかわからないし、それでも信じてる有村の気持ちも理解できない……ごめんね、有村の誕生日なのにこんなこと言って」
「いや、俺こそごめん。崎坂励ます為に飲みに来たのにこんな話しちゃって」
有村の言葉に黙って首を横に振る。
「今日はありがとう、誘ってくれて。私は元気出たから」
机から伝票を取ろうとすると、それを有村が止める。
「どうして? 今日は有村の誕生日だっていうし、誕生日祝いに私に出させて」
「今日は崎坂の為に飲みに来たから、俺が出す」
「でも……」
「いいから」
これ以上は何を言っても無理だろう。
諦めて店を出て行こうとカバンを持った時、有村が「あっ!」と声を上げた。
「何?」
「なあ、崎坂。さっきの誕生日祝いって、まだ有効?」
「もちろん。そんな豪華なことは出来ないけど、知ったからには何かプレゼントするよ?」
ニッコリ。
有村にいつもの笑顔が戻った。
そして、その笑顔のまま発された言葉に、私は戸惑うことになる。
「じゃあ、今度一日俺に付き合ってよ」