イケメン同期に素顔を見抜かれました
「崎坂!」
と、途中で後ろから声を掛けられ振り返る。
「有村……」
有村は私の前で立ち止まり、少し乱れた息を整えていた。
「よかった、会えて」
「どうしたの? そんなに急いで」
「い、いや。あのさ、今日何か用事ある?」
「? ううん。これからそのまま家に帰るだけだけど?」
どこか少しホッとした表情の有村。
私が家に帰るってだけなのに、なんでホッとしているんだろう。
「……何もないなら、私帰るけど?」
じゃ、と駅へ向かって歩こうと一歩踏み出すと、軽く腕をつかまれた。
「何なの? さっきから」
いつもより歯切れの悪い有村に、少しだけ苛々が募ってくる。
「あのさ。崎坂……」
しばらく続く沈黙。
俯いていた顔を上げた有村は、私の目を真っ直ぐ見据えた。
「俺、お前のことが好きだ」
「……へ?」
自分でもびっくりするくらいの間抜けな声が口から洩れた。
有村が、私のことを好き?
空耳かと思ってみるけれど、私を見つめる有村の目は真剣だ。
「ごめん。本当はちゃんと向こうと別れてから伝えようと思ってたんだけど、崎坂のこと狙ってる奴がいるって話聞いて、焦って……」