イケメン同期に素顔を見抜かれました



「じゃあ芽衣ちゃん、よいお年を。お餅の食べ過ぎには気をつけてね」

「はい。児玉さんもよいお年を」

有村に気持ちを伝えることを諦めて3日後。

私は就職して初めての仕事納めを迎えていた。




あれから、何度か有村から連絡が入っていたけれど、全て無視した。

職場でも、話しかけられることのないように出勤時間を早めにしたり、退社時間も調整した。

その甲斐もあって、有村に会うことはなく、今日の仕事納めを迎えられた。

年明けの仕事始めまでは約1週間。

その頃には私の傷も癒えているだろう。

きっと、『同期』の顔で有村と接することが出来るはず。

だから今は、少しだけ意地を張らせてほしい。

なのに、なぜ……



「崎坂!」




私に意地を張ることを、許してくれないのか。

ロッカーを出た途端、有村に呼び止められた。

そのまま、軽く腕を引かれ近くにあった会議室に連れ込まれる。




「ちょっと、離してよっ!」

「イヤだ。崎坂が俺の話聞いてくれるまで離さない」

いくら私が吠えても、有村は腕を離してくれない。

そして、反対の手から一枚の紙を差し出した。

「何?」

「いいから、読め」

なんでアンタに命令されなきゃいけないのよ。

有村を軽く睨んだ後、二つ折りになっていた紙を開くと。




「お姉ちゃんの、字?」

そこには、私のよく知っている筆跡が並んでいた。




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