イケメン同期に素顔を見抜かれました
5分後、喫茶店に現れた雛子に、櫂はクリスマスイブから今日までの出来事を簡単に話した。
「で、芽衣に有村くんの話を聞くように説得してほしいと」
「はい。初対面でこんな失礼なお願いしてすみません」
「……芽衣は頑固だからねぇ。ここからは想像だけど、思うことあってあえて避けているのかもしれないなあ」
「それは、俺のことが嫌いってことでしょうか?」
テーブルに頭を突っ伏す櫂に、雛子が頭を上げるよう促す。
「いやいや、決めつけはダメだよ。とにかく芽衣に話を聞いてみないことには始まらないでしょ?」
「はい……」
「ただ、有村くん、ひとつ聞いていい?」
先程までの柔らかい雰囲気から一転、雛子の声が心なしか固くなった。
自然と櫂の背筋ものびる。
「芽衣の事は、本気なのよね? 本当に大事に思っているんだよね?」
「はい。出来ることなら自分の手で守りたいって思ってます」
櫂の返事に雛子は大きくうなずき。
カバンからメモ帳とペンを取り出すと、何やら書き始めた。
書き終わるとそれを丁寧に折り、櫂へと手渡す。
「これは?」
「手紙。とにかく芽衣を捕まえて、私からって言って押し付けて読ませて。多分、これで話を聞いてくれると思うから」
「……ありがとうございます!」
ふう、っと長い息を吐くと、向かいの席で雛子がクスっと笑うのが見えた。
「少しはお役に立てそうかな?」
「はい! 俺、どんな結果になってもとにかく崎坂の気持ちが知りたかったから。……ってやっぱりフラれるのは怖いですけどね」
「有村くんも年末年始、モヤモヤしたままで過ごすのは嫌よね。私個人としては、芽衣からいい返事がもらえることを期待してるよ」
優しい笑顔を向けられて、泣きそうになる。
芽衣に昔聞いたことがある。
「お姉ちゃんには不思議な癒し効果がある」と。
もしかしたらこれがその、癒し効果なのかも知れない。