イケメン同期に素顔を見抜かれました
「じゃあ、櫂くん。またな」
「はい、慎吾さんも頑張ってください!」
すっかり名前で呼ぶほど打ち解けた慎吾と櫂を見て、雛子がクスクスと笑いだす。
「どうした、雛?」
「慎くんってば、有村くんが来る前と態度が違い過ぎて」
「会ってみてすごいいいヤツだったんだから、態度が変わったっていいだろ、別に」
「……ですって。よかったねぇ」
「はいっ!」
「何、その満面の笑み」
「ん? 芽衣、なんか言ったか?」
「……別に。じゃあ、私、有村送ってくるね」
まだまだ話したりなさそうな櫂の背中を押しだし、芽衣は玄関のドアを閉めた。
「今日は楽しかったー。ありがとな、芽衣。呼んでくれて」
「…………」
「芽衣? どうした?」
「別にー。よかったね、大好きな慎くんと話出来て」
「まあな。一生会えるはずもないと思ってた憧れの人物に会えるなんて、夢みたいだよ」
子どものようにキラキラと目を輝かす櫂を見て、芽衣は何だか面白くない。
「そうだね。それだけでも私と付き合ったメリットあったよね」
思わず可愛げのない憎まれ口を叩いてしまう。
「なーに拗ねてんだよ」
「痛っ!」
突然デコピンをくらい、オデコを押さえる。
「そんなことで拗ねるなよ。俺だって色々我慢してるんだから」
「色々って、何よ」
「ホントはこの年末年始、芽衣と一緒に旅行とか行きたくて計画してたけど、家族思いの芽衣の気持ちを優先して、言い出せなかったり」
「え? 有村、旅行行きたかったの?」
「旅行っていうか、芽衣と一緒にいたかったんだよ」
「そう、だったの……」
「それにー」
「え、まだあるの?」
目を丸くする芽衣。
櫂は拗ねた口調で言葉を続ける。