イケメン同期に素顔を見抜かれました



会社全体のイベントということもあり、たくさんの方と会うことができた。

4月の研修でお世話になった社員さんや、普段電話でしか話すことのない別の課の方。

チーム長や児玉さんの旧知の人に会うときには、

「うちのルーキーの崎坂さん」

って顔をつないでもらったり。

「一気にたくさんの人に会っちゃうと、全員の顔覚えられないですね」

「すぐには無理だけど、この課にはこの人がいたなあ、って覚えておけばきっと芽衣ちゃんの役に立つこともあるはずよ」

児玉さんの言葉には説得力がある。

仕事だけではなくてプライベートでも尊敬できる女性のひとり。

「私、児玉さんの部下になれてよかったです」

「突然どうしたの、芽衣ちゃん。酔ってる?」

「そんなことないですよ。本当に一番最初の配属が研究チームでよかったって思ってるんですから」

「……あれが一番の上司でも?」

目線の先にはすでに船を漕いでいるチーム長。

お酒の席は嫌いではないらしいのだけど。

「チーム長って酔っぱらうとすぐに寝ちゃいますよねぇ」

「まあ、絡み酒よりかはマシかしらね」




世話のやける上司ねぇ、と児玉さんがため息をついたのと、

「よっ、崎坂。久しぶり」

そんな声が掛かるのは同時だった。



「有村。いたんだ」

「いたんだ、っていうか今来たとこなんだよ」

そう言って、有村が空いていた私の隣の席に腰を下ろす。

私は有村の逆隣にいる児玉さんの肩を叩き、一応有村を紹介した。

「あ、同期の有村です。有村、こちら私の上司の児玉さん」

「初めまして、有村です」

「児玉です、初めまして。有村くんは営業部だっけ?」

「はい。今日もちょっと得意先の外回りで遅くなっちゃって」

営業部、というポストがぴったりの有村は、児玉さんとも自然と会話をしていく。

いいなあ、私には初対面でそんなに話題を広げることが出来ないよ。




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