初恋の君は俺を忘れてしまいました。
―グイー


私は右手を引っ張られ、いつのまにか誰かの腕の中にいた。


私の好きなラベンダーの香り。


前に聞いたことがある。


「ラベンダーの香り、好きなんだ?私も好きなんだ」


「・・・へえ」


私の質問に・・・昂は素っ気なく答えてくれたんだっけ。


でも、返事をしてくれたのがそのときが初めてですごい嬉しかったのを今でも覚えてる。


きっとこんなことを思い出す余裕があるのはきっと昂の腕の中にいるからなんだろうか。


「なにやってんの」


昂はその男の子に不機嫌そうに聞く。


「な、なにって・・・」


「俺にはお前がこいつのこと襲おうとしてるように見えたんだけど」


「き・・・君には関係ないじゃないか」


「は?ないわけないじゃん。自分の大事なやつが襲われそうになってて関係ないわけないだ
ろ」


男の子は黙りこんでしまう。


「・・・もう、沙菜に二度と近づくな」


昂は男の子に追い打ちをかけ、私の腕を引っ張り歩く。


こんなときでも、嬉しいと思ってしまう。


さっき・・・


「・・・昂?」


「・・・なに」


「さっき、大事なやつって・・・」


「・・・うるせ」


後ろからしか見えなくてあんまりよくわからなかったけど、ほんの少しだけ昂の顔が赤くなっ
ているのを見て、私は微笑んだ。


昂はいつも私に嬉しいことばかり、してくれるし、言ってくれる。


私はなにか返せているだろうか?


そんなことを考えながら更衣室で着替えた。
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