初恋の君は俺を忘れてしまいました。
他の同級生の誰よりも新しい制服を着こなしてきらきらしていた。


同じクラスだと知ったときはすごく嬉しかった。


でも、昂はなんでもできて、すぐにクラスでは、いや、学校では人気になった。


他のクラスや、他の学年からも休み時間になれば、教室の窓が女の子で埋まる。


そんな昂に話しかけることがなかなかできなかった。


入学から三か月くらいしたころ・・・


私は中学でできた友達と話をしていた。


「なあ」


「ん?」


後ろから呼ぶ声が聞こえ、後ろをむくと、そこには昂が立っていた。


(え?は、な、なんで・・・)


私は平然を装い、


「どーかしたの?」


「消しゴム。貸して」


松村君の机の上には英語の教科書が広がっていた。


次の授業の課題をやっているらしい。


昨日の授業で予習の課題を出されていた。


「どーぞ!」


「ありがと」


「ふふ」


「・・なに」


「松村君でも課題忘れたり、忘れ物したりするんだね」


「俺のことなんだと思ってたんだよ。ってか、昂でいい」


「え?あ・・・うん//」


そういい、また、課題に取り組んだ。



昂はあんまり人とは関わらなかった。


友達とも最小限しか話さず、一人の時はいつもぼーっとしていた。


昂の名前を呼び捨てで呼ぶ人は少なく、すごく嬉しかったのを今でも覚えている。


それからも、こっちからは恥ずかしくてなかなか話を持ち掛けられない私にときどき話かけて
くれた。
< 3 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop