初恋の君は俺を忘れてしまいました。
「できたぞ」


「やったー。昂にいのご飯大好き!」


「そうね。はやく食べましょ」


五人でテーブルを囲むように座った。


昂のお父さんは隣の部屋から補助いすをもってきた。


「「「「「いただきます」」」」」


五人で一斉に食べ始める。


「おいしいっ」


「うまいな。昂、上達したな」


「そんなことない」


昂の作ったご飯は本当においしくて、私もたくさん食べさせてもらった。


あとは・・・あの作戦を成功させるだけ。


「美羽ちゃん!一緒にコンビニへスイーツ買いに行かない?」


「いく!」


「おい、もう八時だぞ。あぶねーよ」


「じゃあ、昂に・・・


「昂のお父さんに来てもらうよ!」


あ、危ない・・・


美羽ちゃんが昂を誘ったら意味がない。


昂のお父さんも察してくれたらしい。


「じゃあ、俺と美羽と沙菜ちゃん三人で行ってくるよ」


うまくまとまった。


私は家を出る前に昂に小声で一言。



「お母さんに、ありがとうって伝えるんだよ」


この意味、わかってくれていたらいいな。


私の作戦は、昂とお母さんを二人っきりにして、話をさせてあげること。


普通に話をさせても沈黙で終わってしまう。


だから、先に昂にお母さんの苦労をわかってほしくて、ご飯を一緒に作った。


私はうまくいけばいいなと思いながら、きれいな夏の夜空を眺めて歩いた。



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