初恋の君は俺を忘れてしまいました。
この時が止まればいいのに。


「・・・昂、あのね・・・


「ん?」


言いたい。


私、転校するかもしれない。


どうすればいい?って。


昂が好きだから、離れたくないって。


大好きって。


「やっぱり、なんでもない!」


結局、言えなかった。


今日は私の荷物が多くて、一回では持ち切れなかったから、昂に家の中まで運んでもらった。


玄関を開けると、リビングの方からまた、昨日のような怒鳴り声が聞こえた。


「沙菜が家に寄り付かなくなったのもあなたせいよ」


「なんでそうなるんだ」


「なかなか帰ってこなくて、沙菜にお父さんらしいことを一つでもしてあげたことがあるの?」


「そんなこと言ったら、君だってずっと仕事で行くのも早いらしいし、帰るのも遅いらしいじゃないか」


「あたしは・・・・・


リビングから聞こえる口喧嘩はなかなか終わる気配がない。


昂がいるのに・・・そう思っても、動けずにいた。


しまいには沙菜なんか産まなきゃよかった。


そう言われそうで・・・


怖かった。
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