初恋の君は俺を忘れてしまいました。
「昂君。・・・ありがとう。・・・これからも沙菜のことをよろしく頼むよ」


「・・・はい。」


お父さんは昂にしか聞こえない声で何かを言っているみたいだった。


「・・・・・」


「・・・わかりました。お約束します」


「ありがとう」


私とお母さんは顔を合わせ、首を傾けた。


いつのまにか涙は止まっていた。


私は昂を玄関まで送った。


お母さんとお父さんは部屋着に着替えるといって寝室へ二人で行った。


昂の背中を見ていると、まだ一緒にいたいと思ってしまう。


「どうした?」


「え?」


靴を履く昂の服を無意識にに引っ張っていたみたいだ。


「あ、えっと、ありが・・・


昂にごまかしてお礼を言おうとした、瞬間、あの昂のラベンダーの香りに包まれた。


昂は玄関で一段下がったところから、私を抱きしめた。


でも、その段差なんか感じられないほど昂の身長は高かった。
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