翡翠の王冠 Ⅰ
「分かった。抱かねぇよ。
けどちょっくら味見するだけならいーだろ?」
「はぁ…。もう勝手にしてください。
ただ、傷物にしたら…ーー。」
「わーってるよ!!
だからおっかねー顔すんじゃねーよ。
…ったくどっちが頭(かしら)なんだか…。」
会話を聞いていたナディアは、そんな言葉とともに近づいて来る足音に体を硬くした。
来る!!
逃げないと!
そう思ったその時、扉が開き隣の部屋から漏れた明かりで照らされた。
「きゃ!」
眩しさについ声を出してしまった。
「おーお嬢ちゃん、目ぇ覚ましてたのか。」
逆光で顔まではよく見えないが、大柄の男が扉の前に立っていた。