イジワル上司に恋をして(ミルククラウン)【番外編】
オレとしたことが、ボーッと回想していて反応に遅れた。
どこに行くんだよ、と思ったが、手に皿を持ってたから追加でものを取りに行くんだとわかった。


颯爽と行ってしまった背中を無言で見送る。

……あー、ガラでもない。
なに、ちょっと緊張してんの、オレ。


正直言うと、自分の気持ちを認めて、アイツの気持ちも知ったあとに二人で外に出るというのは初めてで。
もちろん、今まで女を連れて出歩いたことはあるけど、アイツみたいなタイプは初めてだからどうしていいのかわかんねぇ。


今までは、暗くなる頃にテキトーに出ては、酒を飲んで。
そのままどっかに……っていうのがお決まりのパターン。その日限りみたいな付き合いだったから、それでよかったし、相手がどう思おうと知ったこっちゃなかった。
嫌なら帰れば、っていうスタンスだったしな……。


「ねぇ。ちょっとコレ!見てっ」


やましい過去を思い返しているオレに、珍しく満面の笑みで話しかけてくる。

コイツが純粋過ぎて、自分がすげぇ汚れてる気分になる……。
いや、実際汚れてるから否定はしないけど……。


「あ?」
「ラテアートです!はい」


ふたつのカップを笑顔でテーブルに置くと、なの花はにこにことしながら席に着く。
両手をカップに添えて、ジッと浮かんだ模様を見つめてる。

俺の手元にも、二つ目のカップが置かれた。
そこには、なの花のものと同じ、ハートマークの模様が描かれていた。


「目の前で見てきましたけど!これ、スゴイですねぇ。わたしにも出来るのかな?」


無邪気にそんなことを言いながら、なかなか口をつけようとしないなの花が可笑しくて。
つい、「ふっ」と笑いを零してしまった。
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