不機嫌な君
1.不機嫌な君、現る
大学を卒業し、一発合格で金崎物産に就職。
一般事務をこなしながら毎日楽しいオフィスライフを送っていた。

「おはようございます」
「あ、おはよう、ひとみちゃん」

私の隣のデスクに座るこのきれいな女性は。
藤村葉月さん(28)

周りに目が行き届き、仕事も早い。そして何より、後輩想いの優しい人。
私は葉月さんが大好きだ。

「どうしたんですか?…今日は何だかご機嫌みたいですね」
私の言葉に、待ってました!と言わんばかりの顔をした葉月さん。

私は思わず一歩後退する。
そんな私の両腕を、葉月さんはガシッと掴んだ。

…見かけによらず、力強いですよ。
と、突っ込みたかったが、それはあえて唾と一緒に飲みこんだ。


「そうなの、今日の私は超ご機嫌なの」
そう言って満面の笑みを浮かべた葉月さん。

私は笑顔を引きつらせ、もう一度問いかけた。
「…一体、どうしたんですか?」
「今日なの!」

「・・・何が??」
「この総務部に、新しい部長が海外から帰ってくるのよ」

「…海外から、ですか?」
「そうなの!その人、この金崎物産社長の息子さんでね?超絶イケメンらしいの」

「・・・はぁ」
あまり乗り気でない私の返事を聞き、葉月さんは私の興味を駆り立てようと必死。

「まだ36歳だって言うし、結婚もまだだし、もしかしたら?なんて」
「…結婚してなくても、超絶イケメンなら、彼女の一人や二人」

「それがいないのよ!」
「・・・」
一体その情報どこから?…恐るべし、葉月様。

< 1 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop