不機嫌な君
「・・・金崎、さん?」
「…お前も、金崎になんったんだろ?」

…そうでした。私は頬をかく。

「…右近、さん?」
「…この期に及んで、まだ『さん』つけるか?」


・・・?!

「い、意地悪言わないでください・・・金崎部長は私より年上なんですから、いくら旦那様でも、呼び捨てなんて出来ません」

そう言って、私まで、金崎部長に、背を向けた。

…すると、突然、ギューッと後ろから抱きしめられ、私はビクッとなった。

そして、見る見るうちに、顔は赤くなる。

…実はここ、まだ教会の外で、車が私達を待っている。…当然、スタッフが、私たちを待っている。

オロオロしてたスタッフたちが、ニヤニヤ顔に変わっている。

・・・こんな所で、喧嘩とか恥ずかしい。しかも、今、みんなの前で、抱きしめられてるわけで・・・

「…仕方ない、百歩譲って、さん付は許す」
「・・・もぅ」

…と言うしかない。

「亭主関白じゃなくて、かかあ殿下ですか?」
そう言って笑ったスタッフ。

…なんだか、その言い方古いです。思わず私は苦笑い。

そんな事を言ったのは、50代の女性スタッフだった。
なんだか納得。

「・・・こう見えて、尻に敷かれてますよ」
そう言って笑った、金崎…ではなく、右近さん。

・・・そんな事を言い合いながら、車に乗り込んだ。

「…いい新婚旅行を!」
スタッフに見送られながら、車が走り出した。
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