不機嫌な君

いつの間にかそこにいる

…昨晩の金崎部長を思い出しただけで、笑いが込み上げる。
普通に言えばいいものを、あんな態度で言われたら、こっちが悪いコトをしているみたいだ。

でも、そのおかげか、金崎部長への見方が少しだけ変わった。
御曹司のくせに、2台のタクシーは不経済だとか言うし。

・・・まぁ、私が気を遣わないように言ってくれたんだろうけど。
その場では分かりにくい優しさだ。

・・・金崎部長との言い合いも、日を増すごとに回数も増える。
最初はビクビクしていた周りの社員達も、一番下っ端の私がこれだけ好き勝手に金崎部長に反論するところを見てるうちに、ひとり、また一人。言いたい事を言う者が増えてきた。

その効果か?総務部の成績が上がっている事に、周りの部署は驚きを隠せなかった。

そんなある日の午後。私は人事部部長への届け物を持って人事部に向かった。
「部長、金崎部長から預かってきました」

「あぁ、これか、ありがとう」
そう言って微笑むと私の手から書類を受け取った・・・。

・・・むむむ。
これは非常にマズイ状況だ。

人事部長は、書類ではなく、私の手を握りしめている。
嫌がって声をあげようとしたが、逆に声が出なくなる。

・・・その手が、私の手を優しく撫でている。
嫌悪感と共に鳥肌が立ち、声も失う。

これが俗に言う、セクハラと言うやつか。

「部、長・・・」
何とかそれを口にした。

が、声が震えている事に気付いたのか、人事部長はニヤリと笑い、立ち上がる。
…人事部の部長室は、部長だけの個室。いわゆる密室だ。

逃げなきゃと思うのに、体が言う事を聞いてくれない。
怖くて、膝が笑っている。…どうしたらいい?


そんな事を考えている間にも、人事部長は私の真横に立ち、あろうことかお尻を?!


「イッ?!テテテテ・・・」

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