不機嫌な君

「大西悠斗さん、この会社の営業部。歳は２９歳で、若干見た目はチャライけど、営業部では一番優秀な人らしいよ？彼女は仕事が忙しくてここ２年くらいいないんだって・・・どう？」

…見た目がチャライ。
その事が少しばかり気がかりではあるが、２年も彼女がいないのなら、遊び人ではないんだろう。
営業成績も一番という事は、真面目なんだろうし。

・・・そして何より、葉月さんと圭介さんが探してくれてた人だ。
断る理由はない。というか、断っちゃいけない。

「はい、会います。是非、会わせてください」
そう言って微笑めば、葉月さんは安堵したように肩を撫で下ろした。

・・・・・・
・・・・
・・・

今日は少しばかり仕事が立て込んでいて、仕事が終わったのは午後７時になるころだった。

「ひとみちゃん、終わった？」
「はい、なんとか」

そう言って溜息をつく。

「今日は珍しく、圭ちゃんの方が仕事が早く終わったみたいなのよ。
いつもの店で待ってるって言ってたから、早速行きましょう」

葉月さんの言葉に頷くと、帰り支度を済ませ、オフィスを出ていった。

お店に着くと、一番奥のの座敷で、圭介さんがこちらに向かって手を振っている。
私と葉月さんはそちらに向かって歩いていく。

「ゴメンね、圭ちゃん」
「いいよ、仕事なんだから。ほら座って」
圭介さんが座るように促す。

・・・その横で、イケメンなスーツ姿の男の人が座っていた。
ほんのり髪を染め、確かにチャライ感じの人だ。

「ひとみちゃん、コイツが紹介したいヤツ。大西悠斗。見た目はこれだけど、見かけによらず真面目だから」
圭介さんの言葉が終わると同時に、悠斗さんを見た。

「初めまして、大西悠斗って言います」
丁寧にお辞儀をされ、私も慌ててお辞儀する。

「は、初めまして。島谷ひとみと言います」
私の顔を見て、悠斗さんはフッと笑った。
…不覚にも、その笑顔にドキッとする。
流石はイケメン。笑顔も様になる。